日本勢、ボーイング次世代機「777X」設備投資活発 富士重は100億円新工場
富士重工業は24日、米航空機大手ボーイングの次世代旅客機「777X」の中央翼を製造する半田工場(愛知県半田市)の新工場棟を報道陣に初公開した。最新鋭の生産設備などを導入し、今年度内に稼働を始める予定。777X向け部材には東レや川崎重工業など日本メーカーが参画しており、2020年の初号機納入を見据え、設備投資が活発になっている。
富士重が約100億円を投じる新工場棟は、4月に建屋が完工。建築面積1万1600平方メートルに部材を接合する自動打鋲(びょう)機や自動搬送機を備えた2ラインをつくり、来年3月までに稼働する。生産能力は最大年120機を計画する。
胴体内で左右の主翼をつなぎ、燃料タンクにもなる中央翼は大型機で全長が10メートル以上と巨大だが、寸法の誤差を1000分の1インチ単位で測る精度が要求される。永野尚専務執行役員は「寸法や角度の精度をすり合わせながら開発する。付加価値が高く、新興国メーカーには難しい」と胸を張る。
半田工場はこれまで現行大型機「777」の中央翼を生産し、9月末までに累計1472機を出荷した。777Xでは部材の追加で価格上昇が見込めるうえ、「20年以上にわたり累計1000機以上(の受注)が期待できる」(永野氏)
大規模受注をにらみ、ほかの日本メーカーも設備投資に踏み切っている。東レは昨年11月に主翼材の炭素繊維複合材を10年間供給する契約を正式に締結。米サウスカロライナ州に新工場を建設し、中型機「787」向けも含めた受注総額は110億ドル(約1兆1440億円)に上る見通しだ。
前部胴体や格納庫などを供給する川崎重工業は、名古屋第一工場(愛知県弥富市)内の新工場が年内に完工し、来夏から稼働する見込み。米ネブラスカ州の工場内にも貨物扉の生産ラインを新設し、ボーイング向けの供給態勢を充実させている。
777Xは350~425席で、最長航続距離は、東京-米ニューヨーク間の約1.5倍に相当する1万6110キロメートル。ボーイングは競合機に比べ燃費を12%、運航費用を10%減らすとアピールし、昨年8月時点で航空6社から計320機を受注している。
■777X向け設備投資(会社名/主な生産部材/設備投資)
三菱重工業/後部胴体/神戸造船所(神戸市)に新設備を導入し、2017年度から生産開始
川崎重工業/前部胴体/名古屋第一工場(愛知県弥富市)に新工場を建設し、17年夏ごろ稼働開始。岐阜工場の新設備と合わせ250億円を投資
富士重工業/中央翼/半田工場(愛知県半田市)に組立工場を新設し、17年3月までに稼働開始
新明和工業/主翼と胴体のつなぎ目を覆う翼胴フェアリング/甲南工場(神戸市)など3拠点に約30億円を投じて新設備を導入
日本飛行機/主翼構成部品/未定
東レ/主翼材の炭素繊維/米サウスカロライナ州に500億円を投じて新工場を建設し、17年5月以降に稼働開始
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