JR九州、課題は本業改善 不採算路線めぐり投資家の厳しい視線も

 
JR九州の上場セレモニーで鐘を鳴らす青柳俊彦社長=10月25日午前、東京証券取引所(山崎冬紘撮影)

 「本当に長い道のりだった。30年前の発足時に、上場をイメージした人がどれだけいたか」。JR九州の青柳俊彦社長は、上場後の記者会見でそう感慨を述べた。

 首都圏路線や東海道新幹線といった収益の太い柱を持たない同社は、駅ビルや不動産を筆頭に収益源を多角化してきた。2014年からは都内でホテル事業を展開するなど、九州の外へも積極的に進出している。

 こうした関連事業は単体売上高の約20%を占め、いずれも数%のJR旅客5社と比べ、桁違いに大きい。“鉄道非依存”の体質を構築したことが、輸送人員の少ない「三島会社」で初の上場へと結実した。

 しかし裏を返せば、本業の鉄道部門が収益面で足を引っ張るという皮肉な構図も見える。国土交通省によると、JR九州の在来線20路線のうち黒字収支は福岡都市圏の篠栗線だけ。昨年度の鉄道部門の営業損益は115億円の赤字だった。

 今年度以降は黒字化する見通しだが、それはJR発足時に国が作った経営安定化基金3877億円を取り崩し、九州新幹線の貸付料前払いに充てるなどの“ボーナス”があったからだ。

 地方の人口減や高速道路網の整備が進む中、JRグループを見渡せば赤字ローカル線を廃止する動きが目立つ。JR西日本は9月、広島・島根両県を結ぶ三江線の廃止方針を発表。JR北海道は近く、維持が難しい路線の存続に関し、沿線自治体との協議を始める。

 これに対し、青柳社長は「ネットワークを維持してこそ鉄道の力が発揮できる」と指摘。収支改善と路線維持に向けたコスト削減を強めるという。

 車両製作への著名デザイナー起用や豪華クルーズ列車の運行で業界他社をリード。「ドル箱路線」は持たないが、不動産開発など事業の多角化を図る成長戦略で完全民営化を実現したJR九州は、いまだ上場の見通しが立たないJR北海道、四国、貨物3社への道しるべともなりそう。だが、今後は不採算路線をめぐる投資家の厳しい視線にもさらされる。

 地域インフラを守りながら、完全民営化で高まった経営や資金調達の自由度を生かし、インバウンド(訪日客)需要をさらに取り込むなど、企業価値の向上を図れるかが問われる。(山沢義徳)