名作アニメ「機動警察パトレイバー」、新鋭・吉浦康裕監督でREBOOT
アニメーションの「機動警察パトレイバー」が帰ってきた。庵野秀明監督が率いるアニメーションスタジオのカラー(東京都杉並区)とドワンゴ(東京都中央区)が企画し、毎週1本の新作アニメーションをネット配信してきた「日本アニメ(ーター)見本市」の特別編として「機動警察パトレイバーREBOOT」が登場。劇場上映を経てブルーレイディスクやDVDとして販売される。監督を務めたのは映画「サカサマのパテマ」監督の吉浦康裕氏。自主制作から世に出てステップアップを続けているキャリアは、大ヒットしている「君の名は。」の新海誠監督と重なる。幅広い世代に人気があるパトレイバーを手がけたことで、新海監督の後を追うクリエーターの最前線に名を連ねた。
警視庁の警察官が乗り込んで操る二本脚歩行のロボットが、騒ぎを起こすロボットを取り締まるという設定で、1988年にアニメーションと漫画がスタートし、小説などにも広がった「機動警察パトレイバー」。2002年に劇場アニメーション映画「WXIII 機動警察パトレイバー」が公開された後は、最初のアニメーション版を手がけた押井守監督が実写で「THE NEX GENERATIONパトレイバー」を作り、劇場で上映していた。
「機動警察パトレイバーREBOOT」は、アニメーション版のパトレイバーとして14年ぶりの新作。復活を待ち望んでいたファンも多く、10月15日の上映初日には大勢が劇場に詰めかけた。そんなファンの喝采を浴びて、15日夜に行われたトークイベントに登壇した吉浦康裕監督。30年近い歴史を持ち、幅広い世代のファンを持つ作品だけに、「作っている最中は楽しくて仕方がなかったが、作り終えて上映される今日の午前中まで、判決を言い渡される囚人の気分だった」と、登壇までの気持ちを振り返った。上映後に拍手が出たことに「ほっとしています」と喜んだ。
「機動警察パトレイバーREBOOT」では、パトレイバーなどロボットの描画に3DCGが使われている。最近のアニメーションでは2Dと3DCGの融合は当たり前だが、以前のような手描きの作画を好むファンもいるだけに不安もあった。それでも「ロボットアニメ的なデザインをしていても、あくまで重機」だから、CGでの作画もなじむと吉浦監督らは考えた。今回のパトレイバーも含め、シリーズで主役となるメカをデザインしてきたのは日本を代表するメカニックデザイナーの出渕裕氏。「もともとCGの方がパトレイバーには親和性があると思っていた」と、登壇したトークイベントで明かした。
新作でも、パトレイバーの基本的な形は変わっていないが、よく見ると細かい部分まで作画されている。手による作画では手間をかけられないため省略した部分が、CGではしっかりと描き込め、実際に存在していそうなメカらしさを出せた。それでいて、舞台になった東京の下町になじんでいる。技術の進化を取り入れながら、以前のテイストも残したことで、古いファンと新しいファンの両方を満足させる作品に仕上がった。
出渕氏だけでなく、脚本家の伊藤和典氏、漫画版の「機動警察パトレイバー」を手がけたゆうきまさみ氏もバックアップを行った。「脚本の最後のフィニッシュを伊藤和典さんにしていただいたら、キャラクターのセリフ回しを変えた。その瞬間にパトレイバーになった」と喜んだ吉浦監督。逆に出渕氏は「当時好きだったという人にバトンを渡せた。これからは好きな人がリメイク、リブートをやるべき」と、新しい才能の登場を歓迎した。
長年のファンに受け入れられることに加え、吉浦監督にはもうひとつの願いがあった。それは、パトレイバーという作品が今後も続いていくこと。そのためには「この1本がめちゃくちゃ大事だと思った」という。「パトレイバーに対して未来があるような作り方にしたい」。リブート、すなわち再起動と銘打って送り出したパトレイバーが、これで終わっては意味がない。そんな思いもあって、「短編だが全部盛りにした。物語からキャラクターから世界観から全部入れた」と訴えた。
出渕氏も「何しろリブートだから。具体的に何か動いている訳ではないが、再来年が30周年だから」と話して、再起動後の展開に期待を持たせた。「勢いで作った感じで今は燃え尽きでいるが、これで終わらないことを願っている」と話した吉浦監督に、「よろしくお願いします」と何度も言った出渕氏の言葉から想像するなら、「機動警察パトレイバーREBOOT」の世界観を起点に、新しいパトレイバーの物語が作られていく可能性がありそうだ。
吉浦監督自身にとっても、パトレイバーへの参画は大きな意味を持ちそう。大学時代から個人でアニメーション制作を手がけて注目され、2005年に「ペイル・コクーン」で商業デビューを飾った吉浦監督。新海誠監督の「ほしのこえ」と同様に、監督・脚本・制作をひとりで手がけた作品で、個人の感性や才能を活かしながら、商業的にも通用する作品が増えていくきっかけのひとつになった。
吉浦監督はその後、WEBで配信した作品をまとめた「イブの時間 劇場版」を2010年に手がけて映画にも進出。これも新海誠監督と同じで、自身の感性を色濃く出しながらも、大勢のスタッフを使って完成度の高いアニメーションを作るようになっていく。2013年には、SF的な世界観を持ったオリジナルの長編作品「サカサマのパテマ」を劇場公開。第17回文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門で優秀賞を獲得した。
2014年からスタートし、第35話まで作られた「日本アニメ(ーター)見本市」でも、「POWER PLANT NO.33」「ヒストリー機関」という2作品を監督した。満を持して作り上げた作品がこの「機動警察パトレイバーREBOOT」。1980年生まれの吉浦監督にとって、子供の頃からアニメーションや漫画で楽しんできたパトレイバーが、14年ぶりにアニメーション化される可能性があると聞いて即座に「自分がやります」と手を挙げた。
「恵まれた素晴らしい体験ができた」と吉浦監督。「僕自身が伸び悩んでいた時期に、自分のためになる良い作品を作らせていただいた」というから、アニメーション監督として転機になる何かをつかんだと言えそう。「再起動したパトレイバーシリーズに今後も関わっていくことで、これまで以上に名前を知られるようになり、その後の活動にも好影響が出てきそうだ。
「機動警察パトレイバーREBOOT」は10月26日にバンダイビジュアルからブルーレイディスクやDVDが一般向けに発売。ブルーレイの特装限定版は税抜き5000円、DVDは3000円。
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