「確定拠出年金」年明け拡大スタート 主婦も公務員も加入OK、1兆円の新市場に顧客争奪戦

 
個人型確定拠出年金について説明するりそな銀行の行員=27日、東京都内

 個人で年金資産を運用する確定拠出年金の対象が、来年1月から主婦や公務員に拡大する。各金融機関は、口座管理手数料の引き下げや宿泊優待サービス、コールセンターによるサポート態勢の充実など、囲い込みを本格化させている。ただ、加入を促す方法に一定の制約がかけられており、幅広く浸透していけるかが課題になる。

 野村総合研究所は、個人型の確定拠出年金に941万人が加入を希望し、新たな拠出額は年間1兆円程度に達すると推計。認知度が8月時点で約3割にとどまっているが、各金融機関は「貯蓄から投資」への流れもあり、個人資産を一気に取り込む好機とみている。

 加入者は、銀行や保険会社、証券会社などから「運営管理機関」を選び、自分で毎月の掛け金を投資信託などで運用する。金融機関側は、運営管理機関に一度選ばれることになれば「解約されにくく、安定して報酬が得られる」(大手生命保険)という魅力がある。

 新たに運営管理機関の業務を始めるのは、SOMPOホールディングス傘下の損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント。同社は、掛け金が2万円以上か、残高が200万円以上などの場合に口座管理手数料を無料にする。当面は月300件の新規加入を目標に、2020年度には月500件まで高め、受託資産残高150億円を目指す。

 三井住友銀行は9月から提携先に委託する体制を変更し、一部を自社で手掛けている。住友生命保険も参入に向けた準備を進めている。

 みずほ銀行は、口座管理手数料の引き下げに踏み切る。従来の月額324円から293円に引き下げることを決定。来年1月に備え、今年11月から商品選択や資産配分の見直しのタイミングが難しいといった悩みを解決するインターネット上でのサービスも開始する。りそな銀行も年3792円の管理手数料を2年間無料にする。

 日本生命保険は1月から、旅行、宿泊、買い物などを優待価格で利用できる加入者専用の福利厚生サービスを始める予定。12月からは手続きや運用、資産評価額の照会、運用商品の変更がコールセンターで全てできる態勢を整える。第一生命保険、明治安田生命保険なども「主婦にも分かりやすい商品、サービスを検討している」という。

 このほか、楽天証券、SBI証券なども管理手数料を条件付きで無料にするなどの取り組みを始めた。

 ただ、取り込みに向けた告知活動には制約がある。銀行は兼業規制の問題があり、窓口営業はできず、パンフレットを配布するのみだ。保険会社はセールス担当による募集活動が禁じられている。業界からは「どこまで加入者が増えるか不安」との声もあがっている。(飯田耕司)