「世のためになるか」というビジョンを
リーダーの素顔■エイチ・アイ・エス創業者、ハウステンボス社長・沢田秀雄さん
エイチ・アイ・エス会長でハウステンボス社長の沢田秀雄さんは、旅行市場に「格安航空券」を普及させた第一人者。赤字が開業以来18年続いたテーマパーク、ハウステンボスをエイチ・アイ・エス(HIS)の傘下に入れ、わずか半年で黒字化した“沢田マジック”は有名だ。その園内では昨夏から、人間に代わりロボットが接客する「変なホテル」が連日満室の大人気。いよいよ来春から全国、そして海外へも展開を始める。
--変なホテルの着想の種は
「6年前にハウステンボスの再生を引き受けて以来、園内のホテルで生活しながら陣頭指揮を続けている。そのうち、ホテル運営に潜む多くの非効率に気づいた。それを解消して『生産性が世界一高いホテル』を実現しようと考えたら、答えはロボット化と自動化だった」
--なぜこんな屋号に
「お客さまにストレスをかけないよう、常に『変革』を追求する意思を込めた。たとえば、1号店では現在、16種182台のロボットが活躍しているが、当初は6種82台。任せられる業務を開拓するなど、この1年でも細かい変革を重ねた」
--省人化にもつながった
「昨年7月に72室・従業員30人で開業し、今年3月に144室へ倍増した。一方で従業員は10人まで減らし、さらに常時1~2人勤務で回すめどもついた」
--今後の展開は
「100店舗くらいを目標に世界へ広げたい。当面はベトナムやタイ、インドネシアなど、HISの店舗網を使い、1年以内に展開を始める。国内では、まず2号店を千葉・舞浜に来年3月開く。愛知県蒲郡市や大阪市内にも出す。これらはテーマパークを訪れる家族客狙いだが、直営だけでなくフランチャイズを募り、ビジネスホテルとしても広げたいと考えている」
--旅行業界では、訪日観光需要が好調だ
「東南アジア諸国の所得増と格安航空会社(LCC)の増加が追い風。ちょうど約20年前の日本の事情に似ており、HISもタイでチャーター便専門航空会社を設立するなど、各国に重点投資している」
--事業での挫折は
「失敗は多かった。右も左もわからない証券業界に参入した際は赤字が5年続いたし、システム障害を起こして営業停止処分も受けた。でも失敗は糧になる。おかげでモンゴルのハーン銀行に出資し、モンゴルでトップに育てることができた」
--起業志望者に一言
「起業はどんどんした方がいいが、継続力が大事。もし3回失敗しても、4回目でうまくいけば成功だ。利益を上げるのは当然として、『将来の世のためになるか』というビジョンも欠かせない。私どもも近々、再生可能エネルギーやロボットを使った植物工場を本格化する。世界の人口増加と食糧不足の解決に役立てたいと考えている」(山沢義徳)
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【プロフィル】沢田秀雄
さわだ・ひでお 大阪市立生野工業高校卒業後、旧西独マインツ大に留学。帰国後の1980年、HISの前身となる格安航空券メインの旅行会社を東京・西新宿で起業、2004年にHIS会長。10年3月にハウステンボス社長。11月1日からHIS社長を兼務。65歳。大阪府出身。
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≪DATA≫
【青年時代】実家は祖父と父が営んでいた菓子製造卸業。好奇心旺盛で、高校時代には紀伊半島の海沿いを自転車で回った。北海道旅行の際に対岸のユーラシア大陸へ目が向き、旧西独に留学。経済学を勉強する傍ら、日本人旅行者向けガイドで「月に当時の金額で200万円くらい稼ぎ4年半で50カ国以上旅しました」。
【起業】ガイドでの稼ぎを株式投資にも回して1000万円ためた。当初は「仕事しながら旅行できる」と、毛皮貿易業を志したが、その後、欧米では一般的だった格安航空券が日本で流通していないことに着目。1980年に「インターナショナルツアーズ」を創立した。
【家族】妻は都内の自宅、自身はハウステンボスとの往復生活のため「昔は犬を飼っていたけれど、今では難しい」。1男1女、孫3人。
【嗜好(しこう)】好物はカレーとおかき、甘い物。お酒は九州の焼酎などを少々。「祖父と父が酒豪だったので、飲めるけれどあまり飲まないようにしています」。海外旅行は「プライベート半分、仕事半分」で、最近は10日間のクルーズ旅行に視察を兼ねて3日だけ参加したことも。
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