天国と地獄~熾烈なシード権争い
スポーツi.国内女子ゴルフツアーも終盤を迎えている。先週の三菱電機では申ジエ(韓国)が今季3勝目(日本15勝目)を挙げ、今季の獲得賞金を約1億2930万円として2位に上昇。目下1位で、2年連続賞金女王を狙うイ・ボミ(韓国)の約1億5470万円に対して約2540万円差に詰め寄った。3位には、日本人トップの笠りつ子が約1億2190万円で追いかける。賞金女王争いが面白い。
しかし、そんな華やかな表舞台の“裏側”で、こんなシーンもあった。
◆女子ゴルフの“裏側”
「マジ、確定ですか? イエ~ィ!」と思わず叫んだのが比嘉真美子、23歳である。最終日にボギーなしの68で回り3日間通算7アンダーで単独3位へ。賞金560万円が加算され、今季の獲得賞金は約2064万円となり、賞金ランクも54位から46位に上昇した。2000万円が“当確”ラインのシード権争いで、比嘉はその地位をほぼ確定させ、生き残ったのである。
シード権…。来季へ向けての優先的試合出場資格。シーズン賞金獲得上位50人に入れば、自動的に与えられる。ところが“板子一枚”で分かれる51位以下には容赦がない。戦う場所を奪われるのだ。
どんなトップ選手でも例外ではない。比嘉にも苦い経験があった。2013年、ルーキーイヤーはツアー2勝。次代のスターと期待されたが、14年中盤から得意だったドライバーを左右に曲げる大スランプに陥った。「どう打っていいか分からなくなった」と。13年8位だった賞金ランクも、15年には17試合連続予選落ちも経験するなど、95位まで落ちた。
シードを逸した場合、サバイバルの舞台を経験しなければならない。12月上旬開催の4日間の最終予選会(QT)出場に向けて、何度も関門を通過しなければならない。そして最終QT上位40位に入れば、“準メンバー”として、ほぼ翌年の出場資格が得られる。比嘉は、昨季18位で今季の出場権を得ていたが、こんな言葉を漏らしていた。
「通過する自信はあったけれど、体調を含めて“その日”に何が起こるかわからない。精神的に、本当にプレッシャーがかかりましたね」
今季も8月下旬のニトリの前までは、22試合で300万円ほどしか稼げず、予選会を覚悟。予選会場での練習ラウンドを予定していたが、その後9試合で約1700万円を積み上げて“回避”したのだ。
そういえば、06年賞金女王になった大山志保は、故障に悩まされて10、12年と2度の最終QTを経験した。
「普通の試合以上に緊張しました。通過する、しないでは天国と地獄ですからね」
最終QTに失敗したら大変である。ツアー出場は主催者推薦(上限8試合)や各トーナメントの予選会などに限られる。戦いたくても戦えない。下部ツアーもあるが、優勝賞金は1試合300万円前後…。最近はビジュアル系も目立ち、スポンサーを抱える選手も多いが、シード権を失い、露出が少なければ、そんな道も断たれてしまう。細々とレッスン会などして生計を立てるしかなく、華やかな舞台から転げ落ちてしまうのだ。
◆残りは実質2試合
先週の三菱電機、ボーダーライン上でランクアップしたのは比嘉の他、服部真夕(50位から47位へ)が“当確”。しかし賞金2000万円未満の“危険ゾーン”にいた46位茂木宏美、47位香妻琴乃、48位金田久美子、49位藤田光里、51位藤本麻子と全員予選落ちで加算賞金ゼロだった。昨季、フジサンケイで初優勝した藤田光里は“圏外”(51位)にはみ出した。ビジュアル系で人気も高いが、容赦はない。結果が全てである。
ツアーも大詰め。残りは4試合だが、今週のTOTOジャパン(4日開幕)、最終戦のツアー選手権(24日開幕)は賞金上位など出場選手が限られる。“ボーダーたち”に残されたのは伊藤園(11日開幕)、大王製紙エリエール(17日開幕)のたった2試合しかない。
「生活を懸けた戦い。きっと火花が散りますよ」とは日本女子プロゴルフ協会・樋口久子相談役。人間の闘争本能が見え隠れする女の戦い。ある意味、賞金女王争いより面白い!?(産経新聞特別記者・清水満)
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