キユーピー「K Blanche」
フジテレビ商品研究所 これは優れモノ□台所用除菌スプレー「K Blanche(ケイ ブランシュ)」
■卵由来の食品成分で手にやさしい
秋も深まり、何かと飲食の機会が増える季節になった。最近では、自宅に友人を招いて食事を気軽に楽しむ人も増えている。一方で、寒い季節のウイルス性食中毒も増えていて、こまめに除菌を行う家庭も多い。今回の「これは優れモノ」は、卵由来の除菌用商品を取材した。
「卵白に含まれるリゾチームというタンパク質は、食品の日持ち向上剤や目薬に使われています」とキユーピーのマーケティング本部、影山智史さん(36)。
キユーピーは、マヨネーズ製造などで国内の卵生産量の約10%を消費している。マヨネーズの主原料になる卵黄だけでなく、卵白や殻なども無駄なくさまざまな活用を進めている。
「白身は他の食品メーカーに買っていただき、かまぼことかお菓子の原料などに使われたり、殻は建材やカルシウム素材になったりしています」と影山さん。
キユーピーでは食品事業を中心に、レシチンやヒアルロン酸などの医薬品の材料にもなる付加価値の付いた商品の開発・研究に力を入れている。
10月12日から発売している台所用の除菌スプレー「K Blanche(ケイ ブランシュ)」は、キユーピー創始者の母校でもある東京海洋大学との共同研究で生まれたものだ。
卵白に含まれるタンパク質のリゾチームに、ある一定の条件で熱を加えると、抗ウイルス成分になることが分かった。「ノロクリアプロテイン」と商標登録した成分は、自社データでウイルス、細菌を99.9%除去することが可能という。
「この抗ウイルス成分は、人のノロウイルスの不活性化を実証しました」(影山さん)。今のところ、インターネット通販だけを行っている。
ヒトノロウイルスへの効果テストは技術的に困難なため、一般的な除菌スプレーでは、ネコやネズミの持つノロウイルスへの実証テストにとどまっている。
影山さんによると、冬場はノロウイルスの流行の季節で、6歳以下の子供がかかりやすいことから、学校・幼稚園などで広がっていく。まずは家庭内での除菌を徹底することで、集団感染を防ぐ必要があるという。
「主婦の方は、除菌の重要性をよく理解されています。一方で、塩素系除菌剤は食品や子供には強すぎるとして敬遠する傾向があります」(影山さん)
影山さんらによるアンケートでは、除菌剤に自然由来のやさしい成分を求める人が多かったという。
今回発売した新商品の成分は、アルコールと卵由来の抗ウイルス成分と水のみ。食品成分なので、まな板、包丁にかけても、水で洗い流したり、ふき取ったりする必要がない“優れモノ”だ。
「この商品は、業務用としてホテルやレストランなどでも使われはじめており、好反響を得ています」と、影山さんは品質の高さを強調した。
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≪interview 担当者に聞く≫
□キユーピー マーケティング本部・影山智史氏
■ネット通販で良さを細かく説明
--発売後の反響は
「10月12日の『たまごデー』にインターネット通販で販売を開始した。発売2週間で予想以上の反響があった。これからの季節を反映してか、受験生のいる家庭からの問い合わせや注文が多かった。ネット通販に絞った理由は、この商品の良さを細かく説明できるからだ。店舗に置いた場合には、販売員がいないと消費者への説明が難しい。認知度が向上すれば、チャネルを広げることも検討している」
--主な販売対象は
「キッチン回りの衛生面が気になる女性を主なターゲットにしている。特に小さな子供がいる家庭を想定している。パッケージについても、除菌と大きくうたった形式ではなく、おしゃれなボトルにした。人を招いたときに、『除菌』と派手にプリントされているボトルを見られるのを嫌がる女性が多いため。中身をすっきりとしたおしゃれな違うボトルに入れ替えている人も多くいるようだ」
--具体的な販促方法は
「モニターに商品を配布し、この商品をどのような場所において使っているのかを写真に撮ってもらい、ネット上に掲載した。すてきなインテリアの部屋にこの商品を置いているモニターの方が多く、口コミで広がっている。この専用サイトには、2週間で12万ページビューのアクセスがあった。参考小売価格は1200円(税込み)と他の除菌剤に比べ高額だが、多くの問い合わせを受けている。品質の高さに加えデザインの良さが受けているのだと思う」
--開発で困難だった点は
「研究から発売まで4年かかった。マヨネーズや調味料といった食品ではなく、カテゴリーの違う商品のため、ネーミングとかコンセプト策定には時間をかけた。アジア、ヨーロッパなどでの海外展開も考えている。今後も卵から生まれた成分を応用・開発することで付加価値の高い商品を提供していきたい」
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■フジテレビ商品研究所
「企業」「マスコミ」「消費者」をつなぐ専門家集団として1985年に誕生した「エフシージー総合研究所」内に設けられた研究機関。「美容・健康科学」「環境科学」「食品料理」「生活科学」の各研究室で暮らしに密着したテーマについて研究している。
http://www.fcg-r.co.jp/lab/
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