キリン、シェア挽回へビールてこ入れ “ご当地”一番搾り、来年2割増

 
地域ごとに味が違うビール「47都道府県の一番搾り」をアピールするキリンビールの布施孝之社長(左)=17日午後、東京都千代田区

 キリンビールは17日、期間限定で今年発売した都道府県ごとに味が違うビール「47都道府県の一番搾り」を、売れ行きが好調なため来年も4月から順次発売すると発表した。今年1~6月期のビール類のシェアは大手4社で唯一シェアを落とす“独り負け”で、首位アサヒビールにさらに水をあけられた。税制改正でビールの税率が引き下げられるとの観測もあり、シェア挽回を目指しビールのてこ入れを急ぐ。

 「上半期は苦しい戦いで、想定よりも悪かった」。同日会見した布施孝之社長は足下のビール事業をこう分析した。

 キリンはビール類(発泡酒、第3のビール含む)のシェアを下げ続けている。かつて50%を超えたシェアは、1~6月期で32.1%どまり。主力「スーパードライ」などが堅調なアサヒとは、この1年で3ポイントも差を広げられた。

 新たな成長の源泉と位置付けた海外事業も、2011年に買収したブラジル子会社が苦戦。15年12月期に業績悪化で1100億円もの減損損失を計上するなど、国内外で不振が際立つ。

 巻き返しを図るために今年5月に発売したのが「47都道府県の一番搾り」。地域ごとに味わいが違うコンセプトが受けて販売が好調だった。17年の販売目標は、今年の見込みよりも2割多い320万ケース(1ケースは大瓶20本換算)とした。

 さらに布施社長が「もう一つの軸」とするのが、製法や風味にこだわり小規模な設備でつくるクラフトビールだ。10月には米クラフトビールメーカーへの出資を決めるなど、個性的な商品で勝負に出る。

 とくにビールは「税制改正をにらんで強化する」(布施社長)考えだ。税制改正の議論の中で発泡酒や「第3のビール」の税率が引き上げられる一方、ビールは下げられるとの観測があるためだ。キリンは発泡酒や「第3のビール」の比率が相対的に高く、とりわけ焦燥感が強い。

 ただ、国内ビール市場が縮小を続けるなか、「短期にシェアを取りに行けば消耗戦になる」(布施社長)のは必至だ。「47都道県の一番搾り」やクラフトビールなどで、どれだけ新たな市場をつくり出せるかが、キリンの成否を握る。