トランプ氏との電撃会談は米携帯大手の再買収地ならし? 孫氏の「抜け目のなさ」に市場は好感
ソフトバンクグループの孫正義社長が米国のドナルド・トランプ次期大統領と会談したのは、モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)などの次世代技術に投資してビジネスチャンスを拡大するための地ならしとみられる。米国の政権交代を好機として、いち早く会談を実現させてしまう孫氏の「抜け目のなさ」を印象付けた格好だ。
ソフトバンクは10月に、最大10兆円規模の投資ファンドの設立方針を発表した。明言はしていないが、今回表明した投資は、このファンドから資金を拠出するとみられる。巨額の有利子負債を抱えるソフトバンクが、外部資金を活用することで高水準の投資継続を可能にする戦略だ。
会談後、孫氏が記者団に示した資料はソフトバンクと並び、シャープの親会社である台湾の鴻海精密工業の名前も記載。同社も米国投資に関与する可能性がある。
AIやIoT関連の技術は、シリコンバレーなど米国の新興企業が先行している。今回の巨額投資には、今年買収した英半導体設計大手アーム・ホールディングスと米有力企業との連携を図り、新ビジネスの主導権を握る狙いがあるようだ。
ソフトバンクは米国内で携帯電話4位のスプリントを傘下に持つ。2014年には同国での携帯事業のシェア拡大を目指して同業のTモバイルUSとの合併で合意したが、市場の寡占化を懸念する米規制当局の反対で実現しなかった経緯もある。
市場では、Tモバイルの買収について「新政権では認められる可能性がある」(アナリスト)との臆測も浮上。孫氏は「今日は話していないが、トランプ氏はさまざまな規制緩和を積極的にすると話していた」と述べ、再買収に含みを持たせた。
孫氏は11月の決算会見で直後に迫った大統領選について「選挙結果が直接的な影響を与えるものではない」とそっけなく答えていたが、トランプ氏が当選すると一転、電撃的な会談を実現。7日の東京株式市場ではソフトバンク株が6・2%上昇し、今年の最高値を更新した。(高橋寛次)
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