トランプ次期政権下で「大型企業の買収」実現可能性も 通信・メディア業界再編を後押しか

 

 米国の通信・メディア業界でトランプ次期政権の企業買収計画への対応に注目が集まっている。なかでも10月に発表された米通信大手AT&Tによるメディア大手タイム・ワーナーの買収計画は業界再編を大きく進展させうる大型案件。オバマ政権下では市場の寡占化を懸念する当局の反対で買収が実現しないケースも目立ったが、企業活動の後押しを打ち出すトランプ氏によって流れが変わる可能性も出てきそうだ。

 「われわれの買収計画は消費者に利益があるとみなされるだろう」

 AT&Tのスティーブンソン最高経営責任者(CEO)は6日、ニューヨークで開かれたイベントで買収承認に自信を示した。

 AT&Tは携帯電話事業で全米2位、ブロードバンド接続事業で同3位で配信力が強み。タイム・ワーナーはケーブルニュースのCNNや映画のワーナー・ブラザーズなどの豊富なコンテンツを持つ。買収総額は854億ドル(約8兆9000億円)に上る。

 AT&Tは2015年には衛星放送大手ディレクTVを買収。ディレクTVの契約者がAT&Tにも契約している場合には、ディレクTVが放映権を持つコンテンツをスマートフォンに配信する際のデータ通信に課金しないプランを販売している。タイム・ワーナー買収には、こうしたコンテンツ拡大の狙いがある。

 両社は異業種の合併であるため市場寡占化の懸念はないと主張するが、トランプ氏は当選前の買収計画発表時、「ほんのわずかな企業の手に権力が集中する」と批判。一方、当選後には、買収承認に強い権限を持つ司法長官に企業活動に好意的とされるセッションズ上院議員を指名しており、計画承認の追い風ともみられている。

 しかし計画がスムーズに承認される保証はない。オバマ政権下では司法省や連邦通信委員会(FCC)が買収に待ったをかけるケースも目立った。

 ソフトバンク傘下で携帯電話3位だったスプリントが14年に同4位のTモバイルUSの買収を目指した際には、当局が業界大手の数が4社から3社に減ることに難色を示し、スプリントは計画を撤回。当局の反対はケーブルテレビ事業首位のコムキャストによる2位のタイム・ワーナー・ケーブルの買収計画も白紙化に追い込んだ。

 トランプ氏は企業活動を重視するのと同時に消費者の大企業への反感にも敏感。「予測不能」を旨とするトランプ氏の意向を見通すことは難しい。(ワシントン 小雲規生)