クラウドで介護情報共有、地域全体でケア

 

カナミックネットワーク・山本拓真社長

 高齢化社会の進展とともに、介護人材不足が深刻になっている。これを踏まえて国は医療介護分野でのIT化や、ロボットの積極的な活用による業務の効率化を重点施策として掲げている。

 医療介護クラウドサービスを提供するカナミックネットワークの山本拓真社長は「国策にのっとって、豊かな高齢化社会を実現するためチャレンジする」と話す。

 --医療介護クラウドサービスとは

 「医師やケアマネジャー、ヘルパー、自治体関係者などが、病状や服用している薬、診療記録・介護記録などの要介護者の情報をクラウド上で共有することだ。これによって、地域全体で高齢者を支える地域包括ケアに取り組んでいく。また、クラウド上の情報を活用すればケアプラン、医療・介護保険請求、訪問介護計画書、介護予防プランなどを業務ソフトで作成することができる」

 --父親である現会長が創業した

 「父はもともと広告制作を手掛けていたが、1999年に翌年4月から始まる介護保険制度に関するテレビCMをつくったことがきっかけとなった。他業種からの新規参入組も含め、多くの事業者の参入が予想された。このため業務システムへのニーズが高まると考え2000年に創業した。私は富士通でウェブサイトの運営を担当していたが、05年にカナミックネットワークに入り、システムの改良を進めてきた」

 --他の医療介護業務システムにはない独自性は

 「他社の業務システムでは、例えばケアマネジャーが担当する要介護者の情報を登録し、他には公表しない。しかし当社は要介護者ごとに専用ページを作成し、ケアプランのほか訪問看護指示書や診療情報提供書、食事内容、体温、脈拍、血圧、排泄(はいせつ)などの情報を担当する関係者の間で共有することができる。この仕組みで特許を取得した。父が広告業界出身だったからメディア化しようという発想になった」

 --9月に東証マザーズに上場した

 「医療介護事業は限られた社会保障費で運営されているが、まだまだ無駄が多い。そのためIT化を進めて合理化する必要がある。上場して得た資金はシステム開発に投資し、介護現場の効率化を進める。また仕事がきつく、待遇が良くないというイメージで敬遠されがちな介護業界だが、上場によって認知度を上げて人材確保に役立てたいという思いもある。医療介護関連事業は地域性も重要だ。営業所など地域密着の拠点も整備する」

 --今後の成長戦略は

 「地域の人々をクラウドでつなげて業務を効率化する。現在、有料、無料合わせたユーザー数は約5万1000人を超えているが、サービス品質を上げてさらに増やしたい。ユーザー数が積み上がっていくストック型のビジネスモデルなので右肩上がりで成長し、粗利も約9割と高い。医療介護に特化したビッグデータを活用した人工知能(AI)開発にも力を入れていく」

【プロフィル】山本拓真

 やまもと・たくま 東海大工卒。2000年富士通システムソリューションズ(現・富士通)入社。05年カナミックネットワーク入社。常務、専務を経て、14年9月から現職。38歳。京都府出身。

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【会社概要】カナミックネットワーク

 ▽本社=東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー31階

 ▽設立=2000年10月

 ▽資本金=3億2412万円

 ▽従業員=61人(16年9月末時点)

 ▽売上高=11億2900万円(16年9月期)

 ▽事業内容=医療・介護・子育て分野のクラウドサービス、コンテンツ広告