三菱自新体制 “未知”に挑むゴーン流改革 日産とは異質のケース、改めて問われる手腕
燃費データ不正問題に揺れた三菱自動車は14日、千葉市で臨時株主総会を開き、資本・業務提携する日産自動車のカルロス・ゴーン社長ら11人の取締役の選任議案が可決された。三菱自は総会後の取締役会で、ゴーン氏が会長に就任し、益子修会長兼社長が社長として留任する人事を決定。ゴーン氏の陣頭指揮で経営を立て直す。
益子氏は総会で、「多大な迷惑と心配を掛け、誠に申し訳ございません」と謝罪。ゴーン氏は「再生に向けた新たな幕開けです」と決意を語った。新体制では、これまで2人いた三菱自の生え抜きの取締役がゼロとなる。不正を繰り返す企業体質の変革を図るため、外部人材による監督機能を強化する。
総会では、取締役への報酬を業績や株価に連動させ、報酬総額の上限を来年度から従来の約3倍に当たる年30億円に引き上げる議案も可決された。
ゴーン氏は日産の提携先であるフランス自動車大手ルノーのトップも務めており、三菱自を含めた3社間で生産拠点の相互活用や部品の共同調達などを推進し業績の改善を急ぐ。ただ、相次ぐ不祥事で地に落ちたブランドイメージの回復は容易でなく、ゴーン流改革の真価が試されることになる。
経営危機に陥っていた日産を短期間でV字回復に導いたゴーン氏が導入したのがコミットメント(公約)経営だ。
常に高い目標を打ち出し、それを達成し続けることで、従業員のやる気を引き出し、さらに業績回復による株価上昇で株主にも報いるという手法で、それを今回、三菱自にも取り入れる。
三菱自の早期再建につなげるのが狙いだが、拡大路線が裏目に出て経営危機に陥った日産と不祥事体質の三菱自では、低迷の原因が違い過ぎる。
日産では余剰人員、過剰な設備を大胆に減らし、業績を急回復させたが、前提には企業としての信頼の高さもあった。一方、三菱自は2000年代にリコール(回収・無償修理)隠し問題を起こした教訓が生かされず、燃費データの改竄(かいざん)だけでなく、不正公表後に実施した再測定でも不正を重ねた。消費者の信頼は失墜している。
日産は、三菱自に対し燃費データ不正問題の舞台となった開発部門に技術者を派遣し技術支援を行うとともに、法令順守意識の改革を急ぐ。しかし、不正を繰り返す企業風土の改革はゴーン氏にとっても初めての経験になる。
ゴーン氏は「お客、株主、従業員の信用を獲得できなければ存続できない」と述べ、信頼回復に全力を注ぐ決意を示した。その言葉通りに信用を取り戻すことができなければ、三菱自を傘下に収めて規模を拡大し、世界首位を狙うゴーン氏の青写真は狂う。改めてその手腕が問われている。
■三菱自動車の燃費データ不正問題発覚後の経緯
・4月20日
軽自動車4車種62万5000台で燃費データを改竄する不正があったと発表
・4月26日
1991年から法令と異なる走行法や机上計算で燃費を計測していたと発表
・5月12日
日産自動車と資本業務提携で基本合意
・5月18日
「パジェロ」など5車種で机上計算していたと発表
・6月15日
販売終了車種でも机上計算や改竄が判明
・6月23日
不正対象車に1台当たり10万円の補償を発表
・6月24日
定時株主総会。相川哲郎社長が辞任し、益子修会長が社長を兼務
・7月4日
軽自動車の生産・販売を再開
・8月2日
特別調査委員会の報告書を公表
・10月20日
日産が2370億円を出資し、筆頭株主に
・10月28日
2017年3月期の最終損益が2396億円の赤字になる見通しを発表
・12月14日
臨時株主総会で日産のゴーン社長らを取締役に選任
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