サミーが「0円パチンコ」体験会 “手軽で身近な”レジャーにファン拡大作戦
遊技産業が苦境にあえいでいる。かつては3000万人いたパチンコファンも、近年は1000万人前後にまで減少。このまま減少傾向が続けば、業界全体の疲弊は避けられない。パチンコ・パチスロは日本の経済発展と歩調を合わせるように“手軽で身近な”レジャーとしてファンを拡大してきた。しかし、1990年代後半からはヘビーユーザー化が進展。身近ではあるものの“手軽さ”という点で課題が残る推移を続けた。これに対し、近年は“手軽さ”を意識した遊技機が相次ぎ登場、ホールの営業面でも“手軽さ”を特徴とした取り組みが進んできた。“手軽な”レジャーとしての素地は整いつつある。こうした中で、改めて問われるのはファンの開拓だ。将来の顧客となりうる若い世代のファン開拓は、どの業界でも大きな課題。遊技産業では、業界大手のサミーがこの課題に挑戦しはじめている。(青山博美)
■“お得意さま”頼りには限界
11月27日、東京・秋葉原。
ゲーム施設運営などを手掛けるセガサミーグループのセガが展開する「クラブ セガ 秋葉原新館」の一角で「0円ぱちんこ パーラーサミー」と題するイベントが行われた。その名の通り0円。パチンコをやめてしまった、あるいは、パチンコをしたことのない人を対象にする“体験イベント”だ。
主催したのは、同じくセガサミーグループの遊技機メーカー、サミー。“体験できる環境の提供”と、その先にある“ファン層の拡大”を模索するために企画した。
パチンコやパチスロに代表される遊技産業は、2005年には34兆8600億円(レジャー白書)もの市場規模にまで拡大。“レジャーの王様”としての地位を不動のものにしたかに見えた。ところが、実際はこの時すでに、異変は表れていた。
年間1回以上参加(プレー)した人の数である参加人口、いわゆる“ファンの数”は1995年の約2900万人(同)から、05年には1710万人へと10年間で1000万人以上減少している。この傾向は、実は2000年以降、年次ごとの若干の増減はあるものの、傾向としては今日まで一貫して続いている。
複雑な遊技が壁に?
この原因はどこにあるのか。
遊技産業は、手軽で身近なレジャーとしての遊技を一貫して追求してきた。その半面で、ヘビープレーヤー化したファンに照準を絞った遊技機、ホールでの営業が台頭。中期的には“お得意さま”であるヘビープレーヤーに頼った事業展開がトレンドとなり、結果として高騰するプレー単価がヘビープレーヤーをも遊技から遠ざけ、新規のプレーヤーにとっては複雑な遊技が壁となる結果となっていた。しかし、ここにきて低単価で長く遊べる遊技機、ホールが増えてきた。これは、新たなファンを開拓する好機でもある。
とはいえ、一度離れた、あるいは、一度も体験したことのない人々に遊技を楽しんでもらうのは簡単ではない。
■親しみやすさ前面にまずは体験
サミーで今回のイベントを企画した広報部門では、多くの人が往来する秋葉原のアミューズメント施設という地の利を生かし、多くの人にパチンコを体験してもらうことに主眼を置いた。
「いくら入りやすく工夫しても、初めての人は入りにくいと思う。そんなパチンコホールだが、一度体験したことがあれば状況は少しは変わるのではないか」(広報関係者)
まずはその辺がイベントの中心的なねらいとなった。
実際の「0円パチンコ」は、ガイド役の社員らのガイダンスを受けながら数分間体験プレーするという形で行われた。台数と1回当たりのプレー時間などから、全体で百数十人が体験。ただ、その様子を眺めていた人たちまで含めると、数百人がパチンコをより身近に感じる機会を得た可能性がある。
「社内ではイベントに長く遊べる遊技機を使おう、という声もあったが、ここはあえて知名度の高いコンテンツを用いた製品を使った。アプローチする対象は、そもそも遊技機を知らない。遊技の内容よりも、親しみやすさを優先するほうが得策と考えた」(同)という。
パチンコファンがプレーするのはホールでのことだ。本来顧客であるファンと直接接するのはホールであり、ファン開拓の主軸という意味でも、ホールの役割は大きい。とはいえ、ホールに最大の営業ツールである遊技機を納めているのはメーカーだ。一連のイベントは、ホールとは違う角度でファン開拓を進めよう、という取り組み。メーカーとしてできることを模索、その中から実現可能なものを展開した“一つの形”ということらしい。
そういうこともあり、サミーの“メーカーとしてできるファン開拓”は今後も続くことになる。むしろ、今回のイベントはその始まりののろしでもある。
ショールームでも開催
ちなみにこのイベントは、今月4日には東京・上野のサミーショールームで、11日には大阪・難波の同大阪ショールームでも開催した。秋葉原と違い、対象となったのは近隣の住民などだが、体験イベントという趣旨は変わらない。パチンコ機に気軽に接してもらう機会を設けた。
同時に、ショールームでのイベントには違った思惑もあった。
「こうしたイベントは1社で取り組むよりも、多くのメーカーがそれぞれ、あるいは一緒に展開したほうが効果も大きい。ショールームでのイベントは、業界他社にもその存在が広まりやすい」(同)と考えた。
例えば東京の場合、東上野の一帯には遊技機メーカーの営業所や支店、ショールームが集中して存在。それこそ“パチンコ村”とまで言われる様相を呈している。そこでこうしたイベントを実施すれば、商談に来るホール関係者はもとより、業界他社にも違った刺激が伝わることになる。
サミーの広報部門には、この結果として多くのメーカーがファン開拓に乗り出し、ホールに少しずつでもファンを送客できるようになれば…というねらいがある。「イベントでも、簡単な遊び方の説明書やノベルティーグッズも用意。親しみやすさを前面に押し出した」(同)という。親しんでもらうこと。まずはここがスタートだ。
■新規顧客へのアプローチ加速
来年度以降、サミーはこうした取り組みをより加速していく。新規顧客へのアプローチ、中でも20代の若年層をどう開拓するかは、将来の業界の存続にも関わる大きな問題だ。
若年ファンは将来も業界を支える顧客となる。しかし、近年は若年層の消費意欲が低く、しかも絶対数が少ない。現代の若者は自動車の保有率も低い。世界的な自動車メーカーが集中する日本でも、大メーカーが若年層の開拓に手を焼いている。これまた世界的な酒類メーカーも、若者の飲酒離れに危機感を募らせる。
それだけではない。かつての若者消費の代表格だったさまざまなモノやサービスが若年顧客の獲得に腐心している。若年層の開拓は、遊技産業に限らない大きな課題なのだ。
「どういうアプローチが可能なのか。一緒にできる企業や業界はあるのか…。いろいろな可能性について検証し、できるものは実施していきたい」(同)
来年度は、サミーのファン開拓にとっての“本格化元年”となりそうだ。
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