スニーカー「ニューバランス」のイメチェン戦略 日本で出店攻勢、相次ぐ新展開

 
11月にオープンしたニューバランスの直営店「ニューバランスグランフロント大阪」=大阪市北区

 米スポーツ用品ブランド、ニューバランスの日本法人が国内で直営店の出店攻勢をかけている。日本ではカジュアル用スニーカーのイメージが強いが、スポーツ用としてのブランド力も高めたいという。東京五輪を控える日本市場への期待は大きい。これまでにない店作りと仕掛けでブランド浸透を図る考えだ。(栗井裕美子)

カジュアルからスポーツへ

 「ニューバランス ジャパン」(東京)は11月、JR大阪駅前の商業ビル「グランフロント大阪」に、関西で2店舗目となる直営店をオープンした。約260平方メートルの売り場に、ウエア、シューズなど計約700点の商品。冨田智夫社長は「直営店ではブランドをトータルに見せることができる」と満足げだ。

 同社はカジュアル用のスニーカーで人気があり、「ニューバランス女子」という言葉が生まれるほど若い女性にも浸透しているが、新店舗ではスポーツ用にも力を入れる。入り口に近いところにランニング用のダウンやシャツ、タイツなどを並べ、走っているポーズのマネキンを目立つ場所に置いた。

 冨田社長は「成熟した北米市場に比べ、日本はスポーツは文化として定着しておらず、まだまだ伸びる余地がある」と指摘。健康志向の高まりや東京五輪開催が追い風になるとみている。

「コト」を消費する

 新店舗で手掛けるのは販売にとどまらない。オープン記念としてスマートフォンアプリを活用し、走行距離を競うキャンペーン「NB Run Club OSAKA“キタvsミナミ”ランニング対決」を期間限定で実施。スタッフがスポーツに関する客の相談に応じるなどスポーツ愛好家の拠点として育てる方針だ。

 狙うのは「モノよりもコトの提供」(冨田社長)によるブランド浸透。製品(モノ)の販売だけでなく、スポーツに触れる機会(コト)を増やし、スポーツ人口の増加を試みる。

 同社は昨年11月、東京・原宿で人工芝を備えた期間限定の「NB BETA STADIUM(ニューバランス・ベータ・スタジアム)」を開設。野球やサッカー、テニスなどを体験できる施設で、約3週間で約7万5千~8万人が訪れたという。

相次ぐ新展開

 同社は比較的知名度の高いランニング以外のスポーツ用にも次々と参入。昨年から今年にかけ野球用、サッカー用、ゴルフ用のシューズを立て続けに投入した。その上、現在6店舗の直営店網も拡大する方針で、今後は年3、4店のペースで新規出店し、15、16店舗まで増やすという。

 スポーツ用品の世界市場は、売上高が3兆円程度のナイキ、2兆円程度のアディダスが牽引。3位集団は、アシックス、プーマ、ニューバランスなどで、それぞれ約4千億円程度で競う。

 ニューバランスとは逆にスポーツ用のイメージが強いアシックスは、カジュアル色も打ち出した復刻ブランド「アシックスタイガー」の直営店を大阪・心斎橋にオープン。3位集団を追うミズノは今年3月、シニア世代に向けた「ミズノウエルネスショップ」を兵庫県尼崎市に開設した。

 スポーツ用品業界は新たなブランド戦略、店舗展開で熱を帯びている。