良い代理店はこう選べ

新興国に翔ける

 □スパイダー・イニシアティブ代表 森辺一樹

 メーカーが海外展開をする上で、代理店を選ぶことは非常に重要だ。自社が展開する事業や商品にとって適切な代理店をいかに確保するかは、売り上げやシェア、その国における自社の将来を左右するほどの最重要事項だといえよう。

 しかし残念なことに、多くの日本メーカーは自社の代理店が本当に良きパートナーなのかどうかについて、明確に判断できていないのが実情だ。疑心暗鬼のまま代理店契約を継続している企業も少なくない。

 「なぜ、御社はその代理店を選んだのですか?」「御社の代理店がベストだという判断基準は何ですか?」。こんな質問に明確に答えられるメーカーは非常にまれだ。

 やっと最近、代理店の選定基準があいまいな状態には非常に問題があるということに多くのメーカーが気付き始めている。海外展開に先進的な企業は既に、自分たちの代理店を第三者によって客観的に検証し直してみたり、代理店網を再構築したりといった取り組みをスタートしている。

 ここで、代理店を選ぶ際に重視すべき2つのポイントをみてみよう。

 まずは、スキルセット。商品を販売店に送り届けるルートの確保や顧客をつかむノウハウといった営業力を備えた代理店であることを見極めなければならない。実際にどれだけ商品を売ることができるのかという実力値を計るポイントである。

 次に、マインドセット。代理店の考え方や理念をきちんと把握することだ。社長がどんなビジョンを持ち、どんな考えで会社を経営し、どんな人柄なのか。さらには、どんな世界観を持っているのかといった人間的側面まで知る必要がある。

 これら2つのポイントを見極めながら代理店を決めていくことを私は推奨している。では実際に、候補に挙がった代理店が自社に合っているのかどうかを見極めるにはどうすればいいのだろうか。

 マインドセットは、非常に感覚的感情的なものであることを踏まえたうえで、自社の企業理念や社風と合致するか、代理店の理念に共感できるかどうかで判断すればいい。

 一方のスキルセットについては、もっと踏み込む必要がある。例えば、候補の代理店が100社の顧客企業と取引があるとする。それらの企業群が自社にとって十分なのか否かについて、自分たちの競合他社の代理店と比較したうえで、スキルセットの高さをしっかりと把握しなければならない。しかしながら、競合他社のチャネル(販売経路)、すなわち代理店のことまで調べ上げて比較するところまでは踏み込んでいない企業がほとんどである。

 代理店は、メーカーと顧客をつなぐ「水道管」のようなものである。管の太さが競合より細ければ、そこを流れる水の量は永遠に競合にかなわない。それどころか、流れる水の量は時間が経過するにつれて大きな開きが生まれ、逆転することができない状態に至ってしまう。

 日本企業は、いま一度、自社の代理店や代理店網の検証をお薦めする。

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【プロフィル】森辺一樹

 もりべ・かずき 海外販路構築のスペシャリスト。10年以上にわたり1000社以上の海外展開の支援実績を持つ。アジア新興国市場の販路構築が専門。海外市場開拓コンサルタントの第一人者として活躍中。“アジアで売る”ためのノウハウをネットラジオで無料配信中! www.spyderagent.com/podcast

 >>森辺氏のツイッターは @kazukimoribe