自動車、燃費不正で揺らぐ信頼 三菱自の日産出資受け入れをきっかけに

 
燃費不正問題の調査状況を国交省に報告後、記者会見で謝罪する(手前から)三菱自動車の相川哲郎社長、益子修会長ら(肩書は当時)=5月、東京・霞が関の国交省

 国内メーカーで燃費をめぐる不正が相次いで発覚し、消費者の自動車業界への信頼が大きく揺らいだ。特に燃費データの改竄(かいざん)を4月に公表した三菱自動車は、2000年以降に発覚した相次ぐリコール(回収・無償修理)隠しで再発防止を誓ったはずだったが、コンプライアンス(法令順守)意識の希薄さが改めて浮き彫りとなった。

 三菱自動車の燃費データ改竄は当初、日産自動車向けを含む軽自動車4車種で発覚し、その後、軽以外の車種にも拡大した。開発部門の閉鎖性や経営陣のチェック機能不全が背景にあり、6月には開発部門出身の相川哲郎社長が引責辞任に追い込まれた。

 不正公表後の再測定でも都合のいいデータを選び、8車種で実際の燃費がカタログ値を下回っていることが、国土交通省の調査で8月に判明。ユーザーや日産自動車への補償費用が膨らみ9月中間連結決算の最終損益は2195億円の赤字を計上した。

 スズキも5月、燃費データを効率的に取得するため、10年ごろから法令と異なる方法でデータを測定していたと発表。燃費の改竄はなかったが、一連の問題の責任を取って鈴木修会長が最高経営責任者(CEO)の職を返上した。

 事態を重く見た国交省は、三菱自動車とスズキの本社などに立ち入り検査に入るなど厳しく対応。再発防止に向け、メーカーが虚偽申請した場合は自動車の生産を停止させる措置を導入するなど処分厳格化を決めた。

 こうした不正は業界再編のきっかけにもなった。不正発覚で経営悪化が懸念された三菱自動車は10月、日産の出資を受け入れて傘下に入った。

 12月14日には、三菱自動車の会長に日産のカルロス・ゴーン社長が就任し、今後は経営再建の陣頭指揮を執る。フランス自動車大手ルノーも合わせたグループ全体の年間販売台数は1000万台規模に達し、ゴーン氏は今後、グループ世界首位を目指す構えだ。