ハッカー標的 IoTにリスク 情報漏洩、物理被害の恐れ
家電や自動車などあらゆるものがネットにつながる「IoT」時代。生活が便利になる一方で、IoT機器を狙ったウイルスの発生など、新たなセキュリティー問題が出てきた。車がハッカーに乗っ取られれば、人の命が危険にさらされる可能性もある。深刻な被害が出る前に対策の強化が急務となっている。
◆身代金ウイルス
「注意!お使いのデバイスがロックされている」。ネットに接続されたスマートテレビの画面に不気味な表示が現れ、操作ができなくなった-。原因は、機器を動かなくした上で、復旧のための金銭を脅し取ろうとする「ランサム(身代金)ウエア」というウイルスだった。
情報セキュリティー会社「トレンドマイクロ」は昨年6月、スマートテレビへのランサムウエア感染例を国内で確認した。感染した場合、自分で直すのは困難で「まずメーカーに連絡を」としている。
トレンドマイクロの森本純シニアスペシャリストは、赤ちゃんを見守るネットワークカメラなど身近なIoT機器が乗っ取られ、個人情報が流出するリスクもあると指摘。「恐喝の材料になるかもしれない。IoTが攻撃されると、物理的・人的な被害に結びつきやすい」
ウイルス感染した監視カメラなど多数のIoT機器が大規模サイバー攻撃の「踏み台」となっていることも判明している。ハッカーに乗っ取られたIoT機器が企業などのサイトに大量のデータを送り付け、サービスをまひさせている。
横浜国立大大学院の吉岡克成准教授(情報システムセキュリティー)は、すでに世界中にある130万台以上がウイルスに感染していると指摘する。
同大のネットワークに対するサイバー攻撃の観測で分かった。発信元のIPアドレス(ネット上の住所)ベースで昨年10月の1カ月間に集計した。感染機器が、さらにウイルスをまき散らしているという。
ウイルス感染している機器の種類は500以上と推定している。ビデオ録画機や監視カメラ、家庭用ルーターが多いが、火災報知システムや医療機器も確認したという。吉岡氏は「医療機器などが乗っ取られている場合は問題が大きい」と話し、早急な対策を呼び掛ける。
◆自動車乗っ取り
自動車をハッキングする実験もすでに国内外である。広島市立大大学院の井上博之准教授(情報工学)は、車にネット接続する機器を取り付け、外部から遠隔操作できる手法を発表している。今後、本格的な自動運転車が登場することで、セキュリティーのリスクは高まる。危機感を募らせた各国の自動車メーカーや国連機関がサイバー攻撃の被害を防ぐ対策づくりに動いている。
政府は、2015年9月に決めた「サイバーセキュリティ戦略」に、IoT機器に関する対策強化を盛り込んだ。機器の設計段階から安全性を考える「セキュリティー・バイ・デザイン」という考え方を打ち出している。
内閣サイバーセキュリティセンターの結城則尚企画官は「将来、ほとんどすべてのものがつながることを前提にして、今から包括的な対策を進めることが必要だ」と話した。
関連記事