野村HD、10億ドル企業誕生へ流れ形成 ベンチャー育成プログラム開始
八木金融イノベーション推進支援室長に聞く
野村ホールディングス(HD)は、ベンチャーの育成を目指す「VOYAGER(ボイジャー)」というアクセラレータープログラムを開始する。事業アイデアを募集しテーマごとに1社、合計5社の参加企業を決定し4月から約15週間かけて共同開発を行い、事業化につなげる。八木忠三郎・金融イノベーション推進支援室長にプログラムの狙いなどについて聞いた。
--ボイジャーを立ち上げた契機は
「イノベーションはサイクルが速い。そのスピードに乗っていかなければフィンテック関連のテクノロジーも活用できないため、ベンチャーと組むことが必要と判断した。われわれの責務はIPO(新規株式公開)を行う企業をどんどん輩出すること。世界で活躍する日本発のベンチャーはまだまだ少ないが、いろいろな企業がプログラムに参画しユニコーン(企業価値が10億ドル=約1174億円=以上の非上場ベンチャー企業)が誕生するような流れを形成していきたい」
--プログラムの特徴は
「野村ホールディングス単独で行うのではなく、野村総合研究所、野村不動産ホールディングスとパートナーを組んだ。また、野村証券が『金融の枠にとらわれないシニア世代の方々の心を豊かにするサービスづくり』、野村不動産ホールディングスが『ライフスタイルの多様化に対応する暮らしの環境づくり』といった出題を行ったように、5つの募集テーマを掲げている」
--テーマを設定した理由は
「試作版の開発だけで終わってしまうと先に進まないため、ぜひとも事業化したいと考えたからだ。例えばわれわれの課題を示さずに『フィンテック関連で応募してください』と通達してしまうと、われわれの目的とズレが生じる恐れがあるのでテーマを絞った。この部分が他社のアクセラレーターと大きく異なる部分だと認識している」
--野村証券はなぜ、シニア関連のサービスとしたのか
「高齢者の富裕層はお金以外の面での悩みが少なくない。優秀な営業マンほど金融サービス以外の相談も、どんどん寄せられているのが現状だ。その際、ベンチャーの視点を取り入れたフレッシュなサービスを提案できるようにしておけば、業務拡大につながるのは必至。また、ベンチャーの業績も向上する」
--プログラムはどういった形で進めていくのか
「応募受け付けは2月末までで書類・面接審査を経てプログラムを開始。渋谷にあるコワーキングスペースを借りて進めていく。そこに行けば野村の誰かがいて、いろいろな相談をすると適切な人を紹介してくれたり、答えが得られる場所としたい。そこでアイデアを具現化し、7月のプレゼンテーションを踏まえ事業化に進むか判断する。コワーキングスペースには多くのエンジニアが登録しているので、彼らとの協業に発展することも期待したい」
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【プロフィル】八木忠三郎
やぎ・ちゅうざぶろう 慶大経卒。1994年野村証券(現野村ホールディングス)入社。2016年4月から現職。45歳。東京都出身。
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