17年自動車業界どうなる? 電動・IT・知能化戦略 力量試されるメーカー
高論卓説電動化、クルマのIT化、クルマの知能化という3つの技術革新を受け、自動車産業は革命的スピードで変革している。その結果、電気自動車、自動運転社会、新たなモビリティ・サービスという産業の3つのメガ・トレンドが生まれてきている。2017年の自動車産業はその生き残り戦略を具現化させる慌ただしい1年となるだろう。
同時にトランプ次期米大統領の政策を受けた「不確実性の時代」の始まりでもある。メガ・トレンドに対応する「国境なきアライアンス」(グローバリズム)と「内向きの米国政策」(ローカリズム)をうまく乗り切る力量が試される。
米ラスベガスで8日まで開催された家電見本市「CES」は、テクノロジーの進歩を確認し、自動車と電機・IT産業の融合を目の当たりにする場となった。事実、日産自動車-NASA(米国航空宇宙局)、ホンダ-Vocal200m(イスラエルベンチャー)、独ボッシュ-NVIDIA(米半導体メーカー)、米インテル-ヒア(独地図会社)など、自動車メーカーと異業種・新興企業との提携を強めるニュースが慌ただしく発表されていた。ここには国境はない。オープンイノベーションを起こす異業種、異文化の連携が求められるグローバリズムの際立った現場がある。
そんな「CES」の真っただ中に、グローバリズムのムードに水を差す発言が飛び出した。それはトランプ氏が自身のツイッターに掲載した「トヨタのメキシコ新工場は有りえない。高関税をかけてやる」という内容であった。祭典に浮かれていた気分を現実へ一気に目覚めさせる一言であった。
トランプ氏が目指す米国の「内向き」政策は、グローバリズムに傾き過ぎた結果で生じた格差を、ローカリズムへ振り戻し再均衡を図ろうとするものだ。
トランプ氏の政策がいかなる影響を世界経済に及ぼすか、見通しは不透明である。自由貿易協定の見直しに伴う国境税や北米自由貿易協定(NAFTA)修正の議論だ。メキシコ、カナダにとどまらず中国、日本からの完成車や部品輸入活動に対し、高関税が敷かれるリスクを認識する。急激な為替相場の変動や長期金利の上昇、原油価格の反転など、マクロ経済の変化も著しく、グローバルなクレジット環境や消費マインドに強い影響を受ける自動車産業の展望は非常に不確実な状況に置かれている。
トランプ氏にとって、メキシコの存在感は無視できないだろう。15年に米国は800万台の完成車を輸入した。その中でメキシコはカナダを抜き、209万台を輸出する対米輸出の最大国に躍り出た。20年にはメキシコからの輸入台数は300万台を超えると試算され、この規模を容認することは、米国雇用を守ろうとするトランプ氏には我慢ならないものとなるだろう。
矢面に立たされたトヨタは確かに難題とはなる。しかし、窮地に立たされたとは思わない。なぜなら、米国の雇用を守り、尊敬される企業であろうとする願いは誰にも負けないと感じられるためだ。これまでの実績とトヨタが掲げる将来への施策や方向性の相互理解を深めることが第一歩だ。
そして、トヨタが考えるIT産業と融合した競争力に満ちた未来の米国自動車産業の夢をトランプ氏と共有すべきだ。ローカリズムの圧力は短期的な課題だ。それは、中・長期的に一段と高い次元のグローバル企業へトヨタが成長するきっかけとなるはずである。
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【プロフィル】中西孝樹
なかにし・たかき ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト。米オレゴン大卒。山一証券、JPモルガン証券などを経て、2013年にナカニシ自動車産業リサーチを設立し代表就任(現職)。著書に「トヨタ対VW」など。
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