LED照明が多様化、競争過熱 音楽再生やスマホ着信通知で快適生活サポート

 
ソニーのLED電球スピーカーは、スマートフォンの着信を指定の色を点滅させて知らせる(同社提供)

 国内外の電機・電子部品各社が人にやさしい家庭用LED(発光ダイオード)照明商品を相次いで投入している。従来は環境にやさしい省エネ性能が売りだったが、住人の起床から就寝まで生活のさまざまな場面に応じて色調を変え、生活をサポートするほか、音楽再生やスマートフォンの着信通知など多機能化も進む。主流の青色LEDよりも省エネ性能で劣り、「日陰者」だった紫色LEDも太陽光に限りなく近い光を再現できる特性が注目され、活躍の場を広げつつある。使い方や種類の多様化で競争が過熱しそうだ。

 上手にコントロール

 「本来なら、夜は人間が寝ている時間。寝ていればいいのに、火を照明に使って、いろいろなことをするようになってから、文明が生まれたのではないか」

 照明世界最大手、フィリップス・ライティング(オランダ)の日本法人が昨年末に発表した「スマートLED照明」の新製品発表会。ゲストとして招かれた評論家の山田五郎さんは、そんな持論を展開した。

 照明があれば、夜でも読書や勉強、テレビや音楽の鑑賞、インターネットもできる。でも、明るければいいというものではない。まぶしい光は目を疲れさせる。生活の場面に応じて、照明を上手にコントロールするのは現代人に求められる「生活の知恵」の一つだろう。

 フィリップスの新製品「ヒュー ホワイトグラデーション」は、色調を選んで生活リズムを整えることができるのが特長だ。

 電球と無線通信でつないだポータブルスイッチで、色温度や明るさを調整する仕組み。仕事に集中したい日中や、ゆっくりくつろぎたい夜間などに応じて、白色電球の色温度をあらかじめ用意した4つのメニューから選べる。

 スイッチは最大10個の電球を操作できる。電気工事が必要な埋め込み式スイッチとは異なり、磁石で屋内のさまざまな場所に設置することもできる。

 山田さんは「睡眠中にトイレに行きたくなって起きたとき、壁の照明のスイッチを押すのは面倒。手元で光をコントロールできるのはありがたい」と、すっかり気に入った様子で話していた。

 昔から「寝る子は育つ」といわれるが、パナソニックは現代の子供たちの睡眠時間について興味深いデータを得た。

 小学生高学年の保護者471人を対象にアンケートを行ったところ、約45%の子供が睡眠時間が8時間未満というのだ。スマホ、タブレット、パソコン、ゲームに親しむあまり、子供たちが睡眠不足に陥っている現実が浮かび上がった。

 そんな時代に快適な睡眠をサポートするため、パナソニックが提供する商品が「くつろぎのあかり」と「目覚めのあかり」だ。

 「くつろぎ」は、設定時間になると、自動で照明が切り替わる仕組み。夕暮れの空をイメージした色温度2000ケルビンの間接光で、ゆったりとした空間を演出する。

 「目覚め」の方は、設定した時刻が近づくと、徐々に明るくなる光とアラームの音で起床時刻を知らせる。

 パナソニックは、照明と学習環境の関係についても興味深いデータを紹介している。

 東大生107人を集めて、色温度6200ケルビンのLED照明「文字くっきり光」と、5000ケルビンの「一般光」を使って問題を解かせたところ、6割超の学生が「文字くっきり光のほうが快適に回答できた」という。

 正解率についてのデータを示していないのは、照明と学力は関係がないからなのだろうが、光が気持ちや見え方に影響し、作業をはかどらせるのは確かのようだ。

 日陰者「紫色」に脚光

 光と音楽を融合させた商品もある。その代表格が照明と同時に音楽鑑賞用スピーカーとしても利用できるソニーの「LED電球スピーカー」だ。

 最新機種は従来と比べ約1.4倍の明るさを実現。ワイヤレスリモコンで操作し、2台を接続してステレオ再生やダブル再生ができ、臨場感のある音楽体験ができる。

 また、好みの色を選んで点灯する192色カラー点灯機能や、リズムや音量に合わせて色が変化する音楽運動モードも搭載。スマホの電話着信があった際、指定された色を点滅して持ち主に知らせる機能もある。

 LED照明市場の日陰者だった紫色LEDにもスポットライトが当たり出した。LEDといえば、省エネ性で優れる青色LEDが主流だが、紫色LEDは本来の色を再現できる利点がある。

 これを快適な空間作りに活用した照明器具が、京セラとインテリアメーカーのアルフレックスジャパンが開発した「ライトコーン」だ。

 紫色LEDと、赤・緑・青の3色のRGB蛍光体を組み合わせた白色光源を搭載。50ワットの電力を消費しながら、150ワットのハロゲンランプに相当する明るい光で室内を照らせる。

 京セラは2005年から、美術館や店舗向けにLED照明器具を展開。家庭向けにも参入し、19年3月期にLED照明事業で年間60億円の売り上げ規模を目指す。「明るい未来」は照らせるか。(宇野貴文)