富士フイルムHD会長兼CEO・古森重隆さん

2017 成長への展望

 □富士フイルムホールディングス会長兼最高経営責任者・古森重隆さん(77)

 ■中国で製品展開、漢方薬の機能強化も

 --昨年6月に助野健児社長の新体制が発足した

 「中嶋成博前社長から円滑に引き継ぎ、販売計画を達成するなど順調に進んでいる。為替変動への対応、経費削減などの合理化策といった課題もあるが、2017年度からの新中期経営計画を立案し、着実に踏み出してほしい」

 --ヘルスケア分野を成長の柱に位置づけている

 「内視鏡、超音波画像診断装置などの機器の販売が順調に伸びている。IT、3次元画像解析などの技術も向上している。がん、感染症、アルツハイマーの治療薬は世界的に需要があり、開発を進めている。18年度以降、新薬を市場に順次出せるようにしたい」

 --この分野の売上高を18年度に1兆円に引き上げる目標を掲げている

 「現状の売上高は4000億円規模で、達成は難しいと指摘するアナリストもいるが、M&A(企業の買収・合併)という手法もある。再生医療向け細胞の培養に使われる培地で高い技術を持つ和光純薬工業の買収は、大きなマイルストーンだ。臓器などを作るのに必要な細胞、細胞の育成・増殖に必要な足場材の技術は持っていたが、これで再生医療に欠かせない3要素がそろう。当社が培ってきた写真技術、微細化技術などと相乗効果がある企業の買収で競争力を高めていく」

 --中国の国有複合大手企業の華潤集団と包括的事業提携を進めることで合意した

 「中国は、先進国と同様に生活習慣病などの患者が増えており、医療ニーズは高まっている。当社も医療機器の導入を進めているが、医薬品の参入のハードルは高い。華潤集団の流通網を活用してサプリメントなどの製品を展開し、漢方薬の機能も高めていく。医薬品事業は時間がかかるが、成果を出していきたい」

 --安倍晋三首相のアベノミクスへの評価は

 「安倍首相は100を超える国・地域を歴訪し、頻繁に諸外国からの来訪者と面談もしている。経済、技術支援を求められ、世界的に頼りにされているのではないか。国内経済については、1ドル=115円をベースに適正な円レートが維持できる環境を整えてほしい。これだけ財政赤字が続けば、社会保障の見直しなども必要になるだろう。当社はコダックと戦い、以前から海外に攻めていったが、最近の日本企業の経営者はそうした意識が薄れているようにみえる。アントレプレナーシップ(起業家精神)を奮い起こし、もっと海外に進出すべきだ。優れた技術を持つ中小企業の輸出振興策も強化してほしい」

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【プロフィル】古森重隆

 こもり・しげたか 東大経済卒、1963年富士写真フイルム(現富士フイルムホールディングス)入社。富士フイルムヨーロッパ社長などを経て、2000年社長。12年から現職。長崎県出身。