仮想現実の店で本が探せる「VR書店」 シャープOBが開発、2020年ごろ開設へ

 

 シャープのOBらが設立したベンチャー企業が、書店を再現した仮想現実(VR)空間の中で、好きな本が探せる「VR書店」の企画・開発に乗り出した。今年前半にも実証実験を開始し、2020年前後に地方の商店街の空き店舗などのスペースに開設する計画だ。斬新な発想でヒット商品を連発してきたシャープのDNAを生かし、地方の活性化につなげ、本との出合いの場や新たな読書の楽しみ方の提供を目指す。

 企画・開発を行うのは、シャープの企業理念である「誠意と創意」を引き継ぎ、革新的な製品の創出を目的に結集した同社OBの高嶋晃社長らが昨年11月4日に設立したベンチャー「team S(チームエス)」(東京都)。シャープ創業者の早川徳次氏の誕生日の11月3日の設立を望んだが、祝日で法務省の会社設立の登記受付窓口が閉まっていたため、翌日に設立したという。

 高嶋氏のほか、シャープOB7人が分担して企画・設計・販売を手掛ける。

 VR書店は実際には本がないが、店舗内で来客がウエアラブル端末を頭部に装着すると、目の前に本棚が並ぶ書店を模したVR空間が広がる仕組み。歩いて本を探したり、「立ち読み」したりすることができる。

 課題は本の閲覧方法だ。コントローラーを操作して行う手法のほか、手を空中で動かし、本を棚から取りだしてページをめくる一連の行為を疑似体験できる技術の開発も検討。気に入った本があればインターネットなどを通じて注文・購入できるようにする。

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 ■出版不況が背景 新たなサービス目指す

 「VR書店」の企画・開発構想の背景にあるのは、全国で相次ぐ書店の閉店だ。出版業界関係者によると、書店が一軒もない地方の市町村は増加傾向にあるという。過疎化に加え、出版不況や電子書店の台頭なども要因とみられる。

 チームエスの高嶋晃社長は、シャープで大きなモニターが付いたビデオカメラ「液晶ビューカム」などの商品企画に携わり、2000年に退社後は、電子書籍配信大手イーブックイニシアティブジャパンを共同創業した。

 電子書籍の普及に努めてきた立場だが、「電子書店は本の検索購入には便利だが、町の書店で体験できる本とのわくわくする出合い、店員とのコミュニケーションを求めるのは難しい」と指摘。VR書店の将来像について「人が集まり、交流をしながら読書が楽しめるスペースにしたい」と語る。まず地方自治体と連携、今年前半にも商店街の空き店舗を活用し図書館を再現した原型モデル「VR図書館」の実証実験を実施。課題を探り、運営方法などを詰める。

 将来は、メーカーと協力して端末の軽量化など技術開発を進め、リゾート地や宇宙などのVR空間で読書ができるサービスの提供も目指すという。高嶋社長は「VRの先駆者になりたい」と意気込んでいる。