収入の道広げるプロスイマーの挑戦

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リオデジャネイロ五輪の競泳男子400メートル個人メドレーで金メダルを獲得し、笑顔を見せる萩野公介(共同)

 プロ宣言していたリオデジャネイロ五輪競泳400メートル個人メドレーの金メダリスト、萩野公介(22)が近く、タイヤメーカー最大手、ブリヂストンと所属契約を結ぶという。五輪のTOPスポンサーである同社初のプロスポーツ選手となる。

 ◆自らの価値向上へ

 一部報道によるとブリヂストンとは複数年契約、世界新記録達成時のボーナス支給を含めて年間1億円に及ぶ条件だとされる。今春、東洋大を卒業、“社会人”第一歩を記す萩野は同世代の新社会人とは比較にならない金を手にする。

 アマチュア時代も金メダルの報奨金など、成績に応じた報酬を得ていた。今後は、練習こそ今まで通り平井伯昌コーチの指導を受けるが、それ以外は自己責任。合宿費など自己負担である。肖像権を管理している日本水泳連盟や日本オリンピック委員会(JOC)の承認取り付けから始め、自らの商品価値を高めてCM契約やメディア露出を増やし、さらなる収入の道を広げていかなければならない。

 その萩野をバックアップするのが、2004年アテネ、08年北京両五輪で100メートル、200メートルを連覇した北島康介さんだ。

 萩野は昨年10月、北島さんが代表取締役社長を務めるマネジメント会社「IMPRINT(インプリント)」と契約、マネジメント業務を委託した。代理人としてブリヂストンなどの企業に出向いて交渉に当たったのが北島さんだった。

 いうまでもなく、北島さんは日本競泳界初のプロスイマーである。アテネ五輪翌年の05年、日本コカ・コーラと所属契約を結び、CM出演やイベント参加などで収入の道を確保、合宿費や遠征費などに充てて競技に集中してきた。

 その経験を、自身に続く2番目のプロスイマーとなる萩野の今後に生かすことになる。これは萩野にとっても大きなチャレンジだが、同時に経営者である北島さんにとっても飛躍のためのステップとなるだろう。

 日本でプロといえば、野球やサッカーにバスケットボール、さらにゴルフ、テニスなど「見る」ことが古くから定着していたスポーツが大半だった。陸上競技や体操、競泳など、五輪の主要競技はプロとはなじまないとみなされてきた。

 長くアマチュアが五輪参加の条件と明文化され、陸上や競泳はアマチュアの総本山のように思われてきた影響であろう。そうした観念を打破したのが、女子マラソンの有森裕子さんであり、男子陸上短距離の為末大さん、北島さんらだった。

 名前を挙げた3人とも自ら会社を設立。自身のマネジメント業務に限らず、イベントの企画・立案や運営などスポーツの普及にも携わる。プロスポーツ選手が設立した会社の多くが節税対策に重きを置く中、彼らの活動は興味深い。

 この秋から冬にかけ、リオ五輪のメダリストが相次いでプロ転向を宣言した。萩野のほか、体操の内村航平、陸上短距離のケンブリッジ飛鳥である。

 内村は所属していたコナミを退社、昨年12月、スポーツ用品メーカー大手のアシックスとアドバイザリー契約を結んだ。同社製のユニホームを着用するほか、スポーツ用品開発などにも携わる。「体操の良さを広めたい」という内村の目標が、北島さんだと聞いた。

 北島さんは現役選手だった09年設立のインプリントで自らのマネジメントを行うとともに、活動の幅を広げてきた。11年にスイミングスクール「KITAJIMAQUATICS」を創設、都内のスポーツクラブやプールを拠点とし各年齢層を対象に指導している。「きれいに泳ぐ」を理想に掲げており、「美しい体操」を心がける内村の思いと合致するのだろう。

 ◆新たな取り組み注目

 さらに北島さんは15年、米国でリハビリ、パフォーマンス向上に実績を持つ「Perform Better」の日本法人「Perform Better Japan」を設立、新たな取り組みを始めている。

 世界的にみても、競技のみで生活する選手はごく一部。日本では、そこを企業が支援してきた。安定は得られるが、活動も限られる。だからこそ、萩野や北島さんたちの取り組みに注目したい。今後のスポーツ選手のセカンドキャリアの在り方として大きな実を結べば…。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)