公共・商業施設にも国産木材積極採用

eco最前線を聞く
床材に国産材を使用したタリーズコーヒー都庁店=東京都新宿区(大建工業提供)

 □大建工業 住空間事業部井波工場住機開発課・新田健課長

 大建工業は国産木材の活用を加速している。主力の住宅向け建材への利用はもとより、公共・商業施設への採用を積極的に働きかけ、強みとする素材から製品までを手掛ける建築資材の総合企業として、国産林業の活性化、環境保全に取り組んでいる。住空間事業部井波工場住機開発課の新田健課長は「国も国産材活用を促しており、当社の取り組みには追い風」と意欲をみせる。

 ◆「林地残材」に着目

 --国産材活用を進めるには

 「立木を伐採する際に出る間伐材など森林から搬出されない『林地残材』をいかに利用するかがポイントだ。また、国産材は軟らかい材質のスギやヒノキが多く、これらを使い、製品化するのが課題となる」

 --具体的な事業展開は

 「住宅向けと公共・商業施設向けに建材事業を手掛けている。住宅向けはこれまでも内装材として広く活用してきた。近年は特に、公共・商業施設での用途拡大に取り組んでいる。中期経営計画でもこの分野を重点市場に位置付け、2015年度に10%だった売上高(連結ベース)に占める比率を18年度に16%に引き上げる計画だ」

 --住宅向けの取り組みは

 「表面材に国産材を用いてその美しさを消費者に訴えようと、4年前に『日本の樹』シリーズを市場投入した。床から壁、さらに住宅機器まで住宅内装を丸ごと国産材にこだわってコーディネートできる特徴を訴えてきた」

 --公共・商業施設に注力するのは

 「国土の約7割を森林が占めるにもかかわらず、木材の自給率は29.6%(14年度)にとどまる。国産材の活用が進まない結果、荒れた人工林が増え、環境保全や災害対策で問題が生じている。国産材を広く活用するにはその4分の3近くを占める軟らかなスギやヒノキの有効活用が重要で、地域材の利用が課題となる。自治体も地元の木材利用に力を入れており、新たな市場として着目した」

 --具体的には

 「12年に富山県産材を活用したプロジェクトを展開できないかと、富山県農林水産総合技術センター木材研究所と共同で技術開発に着手した。その結果、県産スギを利用した不燃パネルと突板貼りアルミ壁材がそれぞれ北陸新幹線の黒部宇奈月温泉駅と富山駅の駅舎に採用された。このほか、土足で使用される施設には不向きとされたスギ材を用いた床材にも地域材を活用している。木材の組織にプラスチックを注入・充填(じゅうてん)し硬化させる当社独自の加工技術『WPC(ウッド・プラスチック・コンビネーション)』を使ったフローリングで、富山県小矢部市役所ロビーのほか、国産材利用で二酸化炭素固定量を認定する『みなとモデル』を推進している東京都港区で『みなとパーク芝浦』『新橋きらきらプラザ』などに採用された」

 ◆自治体から依頼増

 --公共・商業施設での今後の展開は

 「市場性という点で、学校や医療・高齢者施設、さらに民間の工場、商業施設など幅広い分野が見込まれる。地域材を使いたい自治体から見積もりの依頼が増えており、民間でも昨年4月にコーヒーショップチェーンのタリーズコーヒー都庁店(東京都新宿区)で床材に採用されるなど広がりをみせている。製品化としては要望の多い外装材への展開が課題だ。農林水産省も森林・林業再生プランで20年の国産材利用50%以上の目標を掲げている。限られた資源の活用を通じ、サステナブル(持続可能)な社会の実現に向けて国産材活用を推し進める当社にとっては追い風だ」(鈴木伸男)

                   ◇

【プロフィル】新田健

 にった・けん 大阪芸術大デザイン学部卒。1991年入社。製造部を経て、2014年4月から現職。山形県出身。49歳。