水資源の保全は社会的責任 アサヒグループ、植林など全社一丸
飲料大手のアサヒグループホールディングスが水資源の保全活動に力を注いでいる。飲料メーカーにとっての“水”は製品を生産する上で欠かせない大切な資源だからだ。アサヒグループでは水資源の保全は企業の社会的責任と位置付け、さまざまな活動に取り組んでいる。
◆四国から全工場へ
その一つが、水源地の森林保全活動だ。きっかけは同グループの中核事業会社、アサヒビールの四国工場が2004年、自発的に水源地である石鎚山系水源地の森林の保全活動を行ったことだった。当時の社員を突き動かしたのは、工場のそばを流れる水源で商品を生産する工場として、上流の森林保全は自分たちで行うという思いにほかならなかったという。
森林保全活動は生産現場で働く社員とその家族が、地域の森林組合、民間非営利団体(NPO)法人などと協働で植林や草刈り、枝打ち、間伐などを実施するというもの。また、活動に必要な林道造りや整備なども行うという。アサヒビール内では四国工場の森林保全活動に賛同する工場・社員が相次ぎ、06年には同社の全9工場で実施するようになり、16年末までの実績は126回、延べ約6010人が参加した。
こうした取り組みはアサヒビールだけにとどまらず、現在はニッカウヰスキーの北海道工場余市蒸留所(余市町)と仙台工場宮城峡蒸留所(仙台市青葉区)、アサヒグループ食品といったグループ全体に広がっている。アサヒグループホールディングスCSR部門の高橋透マネジャーは今後の展開について、「森林保全活動の実施エリアをさらに広げたい」と意気込んでいる。
活動の参加者は社員にとどまらず、一般にも広がっている。アサヒビールの神奈川工場では10年から、北海道工場では15年から森林保全活動を一般から参加を募る試みを開始した。「一般の参加者はまだ少ないが、当社の森林保全活動は確実に広がりをみせている」(高橋氏)と胸を張る。
アサヒグループの水資源の取り組みは水源地の保全だけではない。同時に、生産工程などの水の使用量削減にも注力している。生産工場のタンクや配管などの洗浄・殺菌する水の使用量の削減につなげている。各工程から出た水を回収し、有効に利用している。工場内で使用する水の全量のうち、約14%が回収した水を使っている。
なかでも、注目を集めているのがアサヒグループで飲料事業を担うアサヒ飲料が開発した容器の洗浄時に使用する水を大幅削減できる技術だ。ペットボトルなどの容器に飲料を充填(じゅうてん)する前、ボトルとキャップを多量の水で洗浄していた。しかし、水と空気を混合して噴射させることができる「エアインダクションノズル」の開発に成功。飲料の充填工程全体の約4割の水の使用量削減につながったという。
◆既存技術を見直し
水源地の森林保全活動や生産工程での水使用量削減などを中心に取り組むアサヒグループの水資源の保全活動だが、課題もある。水の使用量削減ペースがここにきて鈍化している。
アサヒビールが1キロリットル当たりの製品を生産するのに使用した水の量(水使用量・原単位)は1990年が9.12立方メートルだった。これに対し、2015年は4.67立方メートルと1990年比で約半減している。
25年前と比べると大幅に削減したものの、ここ数年のアサヒグループ全体の水使用量・原単位をみると、ほぼ横ばいで推移しているのが実情だ。生産工程での水の使用量を削減する技術は、ほぼ導入し尽くしているためだ。革新的な技術が登場しない限り、大幅削減は難しいとみられる。
とはいえ、手をこまねいているのではなく、「水の使用量を削減するには既存技術を見直したり、雨水を利用したり、生産工程などで水の再利用を増やし削減していく」(高橋氏)という。水の使用量のさらなる削減に向け知恵を絞る日はしばらく終わりそうにない。
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