ジーンケア研究所、抗がん剤の実用化目指す 老いの仕組みヒント
通常よりも5~10倍速く老化する「早老症」。なかでも日本人に多い「ウエルナー症候群」はがんを発症させる。この発症メカニズムを創薬のヒントとして、RNA(リボ核酸)を構成する核酸を使った「核酸医薬」という技術で画期的な抗がん剤の開発に取り組むのが、ジーンケア研究所だ。
同社は官民共同プロジェクトで、ヒトの老化に関する遺伝子を研究していたエイジーン研究所の成果をもとに立ち上げたバイオベンチャーだ。
ウエルナー症候群の研究から「DNAヘリカーゼ」という酵素が遺伝子の傷の修復に深く関わり、さらにヘリカーゼはがん細胞では通常の20~100倍あることが突き止められた。そこでジーンケアは「がん細胞からヘリカーゼを取り除けば、がん細胞の活動を抑えられる可能性がある」(高橋直也社長)と考え、ヘリカーゼを取り除く核酸「RECQL1-siRNA」の基本特許を2003年5月に出願した。
ところが開発はいきなり大きな壁に当たる。核酸は体内に投与するとすぐに分解してしまう課題を抱え、世界に承認されているのは5品目しかない。ただ、この課題は患部に薬を確実に届ける「ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)」という技術が確立されつつある。
ジーンケアは早期実用化のために複数の製薬会社との共同研究に取り組んだが、2014年9月までにすべて破棄された。資金調達に行き詰まり、会社は存亡の危機に立たされた。
そこで当時、ジーンケアの社長だった六川玖治取締役は、経営コンサルティングなどを手掛ける会社に支援を要請。この会社が15年1月から当面の運転資金を拠出、新たな経営陣も派遣し、本格支援に乗り出した。ジーンケアは資金確保のめどをつけ、同年7月に新たな特許出願にこぎ着けた。
紆余(うよ)曲折が続くジーンケアの研究開発に注目し、評価しているのが埼玉医科大学国際医療センターの藤原恵一教授だ。同社でのマウスによる実験データを見て、「正常細胞まで傷つけるような副作用の危険性はかなり低い」と判断。共同研究をスタートさせる。
藤原教授が念頭に置いているのは、末期がんの患者に多く見られる腹水貯留の改善。腹水がたまると内臓が圧迫され、思うように食事が取れず、体の衰弱が一気に進む。患者のQOL(生活の質)を致命的に低下させる症状だが、現状では有効な治療薬はなく、腹水を定期的に抜く対症療法しかない。藤原教授は「副作用のない薬を腹腔内に直接投与して腹水をコントロールできれば、患者のQOLが高められる。食事が取れれば体力も付き、結果として延命につながる可能性もある」と話す。
腹水貯留に悩むがん患者は国内に10万人とされるが、実は「製薬会社からも国からも見放されたアンメットニーズの領域」(高橋社長)だ。藤原教授とジーンケアは臨床試験に向けて、16年12月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)の事前面談を受け、今年4月には対面助言を予定、18年の臨床試験開始を目指す。
高橋社長は「少しでも早く、実用化への道筋を立てて、がん患者やその家族、さらに医師の役に立ちたい」と話す。
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【会社概要】ジーンケア研究所
▽本社=神奈川県鎌倉市梶原19-2 テコム第二ビル
▽設立=2000年12月
▽資本金=1002万6000円
▽従業員=7人
▽事業内容=核酸医薬品の開発
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