□ホールマーケティングコンサルタント LOGOSプロジェクト上級研究員・岸本正一
■ぱちんこが有する「娯楽性」の社会的価値
筆者も将来、「高齢者」と呼ばれる時期がやってくる。肉体的衰えを実感し、日々の生活における行動範囲も次第に限定されていくことはたやすく想像できる。しかしながら、いつの時代も人生における「楽しみ」は必要であり、それを見いだせなくなっている将来の自分の姿は想像したくない。
昨年末のIR推進法案成立・施行を受け、ギャンブル依存症対策の強化に向けた動きが加速すると思われるが、政治家や識者にはぜひとも“ぱちんこ”が有する「娯楽性」の社会的存在価値についても同時に考えていただくことを期待したい。
“ぱちんこ”は「射幸性」を伴うことから、風営法により善良な風俗環境維持のため厳しく管理されている遊技ではある。しかしながら、同時に「娯楽性」をも有していることから、(参加人口が減少したとはいえ)多くの国民がこれを楽しんでいるのも事実である。
実際に、少額で遊ぶことができる1円パチンコなどの低貸玉パチンコ・パチスロにおいては、高齢者が遊技する姿が目立つ。そこにはある種のコミュニティーの存在すら感じられる。パチンコ・パチスロの射幸性が問題だとしても、1円パチンコのような低貸玉営業では消費金額が著しく抑制されるため、1時間連続遊技しても貸玉料金から景品金額を減算した平均消費金額は500円に満たない。都心部の喫茶店のコーヒー価格とそれほど大きな差はない。全国のパチンコホールに設置された遊技機の半数近くが該当する低貸玉コーナーには、一般的な「ギャンブル依存症」という言葉が持つイメージとは懸け離れた世界が存在している。
このようなパチンコ・パチスロの「娯楽性」に触れることなく、「射幸性」だけを取り上げて問題視することはフェアとはいえない。ましてや、「高齢者」の一部が日々の楽しみとして興じている娯楽を、政争の具として〇×判定するのは論外だ。重要なのは行き過ぎた射幸性の抑制であり、のめり込みを防止するためのシステム作りのはず。存在自体を否定するのは、少々「やり過ぎ」という感が否めない。
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【プロフィル】岸本正一
きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。
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