危険なトランプ政権の関税政策 「自由貿易」破壊でドル暴落リスク増大
高論卓説「自由貿易」破壊でドル暴落リスク増大
トランプ米大統領は、メキシコからの輸入品に20%の関税をかける案を検討しているが、世界貿易機関(WTO)違反の疑いがある。今後、WTO違反の嫌疑が濃い対応が続出すれば、世界の市場は「リスクオフ」と判断して、ドル下落圧力が高まるかもしれない。
一方、財政拡張はドル高要因となる。どちらの力が勝るのか。「自由貿易」秩序の破壊を市場が認識したとき、ドル下落圧力が優位になる局面になると予想する
ホワイトハウスのスパイサー報道官は26日、記者団に対し「輸入品に対し、新たに20%の税を課す」と述べた。
詳細がはっきりしないので、正確な結論を導き出すのは難しいが、もし、メキシコからの輸入品にだけ新たな課税を実施するなら、それはWTO原則に違反する可能性が高そうだ。
また、トランプ大統領は昨年の大統領選の中で、中国からの輸入品に45%、メキシコからの輸入品に35%の国境税を課す方針を示していたが、特定の国からの輸入を狙い撃ちし、高い関税を課すこともWTO原則に反することになる。
米国内のメディアの論調をみていると、米国の経済にとって明確に打撃となるような対応策は、「口先介入」的な存在で、ブラフとして使っても、現実には実行しないだろうとの見方が多かった。
また、市場関係者の多くは、今は口をつぐんでいるインフラ投資や1兆ドル規模の減税について、いずれ詳細なプランが示されると期待している。
タイトな雇用環境の下での財政拡張は、ドル高を促進する要因となる。あいまってインフレ期待が高まり、現実の物価上昇率も加速の気配をみせれば、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースも自ずと速まっていくだろう。そのことが、さらにドルを押し上げる要因となる。
足元で、この見方が多数派であり、為替相場でドルは1ドル=115円台で堅調となっている。しかし、メキシコ国境に壁を造る大統領令に署名し、「20%の新関税」案も出てきた。また、トランプ大統領は就任演説で「保護こそが繁栄と強さにつながる」と強調。自由貿易のもたらす恩恵には、一言も触れなかった。
もし、トランプ大統領が現在の「自由貿易」の基盤を根こそぎ破壊するとみている市場参加者が増加すれば、急激なドル安現象が起きる可能性がある。自由貿易の原則を「ちゃぶ台返し」することだけはしないでほしいと願うばかりである。
【プロフィル】田巻一彦
たまき・かずひこ ロイターニュースエディター。慶大卒。毎日新聞経済部を経てロイター副編集長、コラムニストからニュースエディター。57歳。東京都出身。
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