内閣府 チョコ摂取で脳若返りの可能性

インタビュー

 □内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)プログラム・マネージャー 山川義徳さん(42)

 --チョコレートの摂取で脳はどう変わる

 「今回、食品大手の明治と協力し、中高年世代の男女30人にカカオ分70%以上のチョコレートを1日25グラムずつ、4週間継続摂取してもらったところ、学習に関与する大脳皮質の量が統計的にも有意な幅で増加した。また、思考と関係する神経線維の質についても一定の改善効果が見られた。両項目とも年齢とともに劣化することが分かっており、その意味でチョコの摂取で脳が若返る可能性が示唆されたと思う。明治による研究では、高カカオチョコの継続摂取で脳細胞の増加に必要とされているBDNF(脳由来神経栄養因子)の値が増加するとの知見が得られており、深い関係があるようだ」

 --研究の舞台となっている革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)とは

 「内閣府が主導する国家重点プログラムの一つで、公募で選ばれたプログラム・マネージャー(PM)の下にトップクラスの研究開発力を結集し、産業や社会に大きな変革をもたらす挑戦的な案件に取り組んでいる。私のプログラムでは、脳の健康度(BHQ:Brain Healthcare Quotient)を比較検証できる指標づくりをテーマの一つとしている。大脳皮質の量や神経線維の質は、一般の病院にある磁気共鳴画像装置で撮影し、比較的容易に測定できる指標だ」

 --今後の展開は

 「国際電気通信連合(ITU)や世界保健機関(WHO)と連携し、脳の健康を測る物差しとしてBHQを国際標準化する取り組みも進める。それにより食事、睡眠、スポーツ、住宅、都市、交通など幅広い視点で脳の健康維持に寄与する取り組みが世界規模で探索されると期待。脳、精神疾患による社会・経済的損失は世界で約5億人、430兆円に及ぶ試算もある。研究の意義は大きい」

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【プロフィル】山川義徳

 やまかわ・よしのり 京都大院修士修了、2000年NEC入社。08年京都大院博士修了、同助教、10年NTTデータ経営研究所ニューロマネジメント室長などを経て、14年から現職。埼玉県出身。