オーストラリアのカジノ事情
遊技産業の視点 Weekly View□シークエンス取締役、LOGOSインテリジェンスフェロー・木村和史
オーストラリアの金融経済の中心都市・シドニー。そのダーリングハーバー西側のピアモント地区のスターホテル内にシドニー唯一のカジノ「スターシティカジノ」がある。ビジネスモデルはIR型だ。運営はオーストラリアの大手カジノ業者、スター・エンターテイメントグループ。カジノの規模はテーブルゲームが約200台、スロットマシン・ビデオマシンが合わせて約1500台、客層は内外の観光客が中心となっている。
そもそもオーストラリアには現在13カ所のカジノ施設があり、1970年代から段階的に各州に設置されてきた。最初は中小規模(非IR型)での開設であったが、1980年代以降はIR型で定着したようだ。
ところで驚くのは、オーストラリアの全カジノに占めるスロットマシンなど無人ゲーム機器の総設置台数は、オーストラリア全土に設置されているゲーム機器の5~6%にすぎないという。ならば残りは、一体どこに設置されているのか。それこそ至る所に設置されている、といっても過言ではない。
これらスロットマシンが設置されている場所は、ポーキーズなどと呼ばれ、カジノ同様、マシンの設置には州政府の許可が必要となる。当然ながら、利用には18歳以上の年齢制限が設けられている。
オーストラリアではさまざまな社会集団(公益性を有する団体施設や地元の自治会や老人会など)が、州政府の許可のもとスロットマシンを設置して、その収益を関連施設などの維持運営費に充当しているケースが散見される。代表的なものとして、RSLクラブ(リタイヤメントソルジャーズクラブ・退役軍人の集会施設)があり、スポーツジム、バーなどとともにスロットマシンなどが設置されている。地元老人会では診療所、リバビリ設備などと一緒にスロットマシンやビンゴが共存しているケースもあるようだ。これら地域共同体や職域共同体の施設では、ポーキーズなどと違って、会員登録をして楽しむのが前提だが、パブリックでの使用も珍しくはないようだ。
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【プロフィル】木村和史
きむら・かずし 1970年生まれ。同志社大学経済学部卒。大手シンクタンク勤務時代に遊技業界の調査やコンサルティング、書籍編集に携わる。現在は独立し、雑誌「シークエンス」の取締役を務める傍ら、アジア情勢のレポート執筆等手掛ける。
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