サッポロビール、黒ラベル缶を5年で倍増へ “弱点”の家庭向け強化
サッポロビールが主力ブランド「黒ラベル」の缶ビール販売を今後5年間で現在の2倍の年間1200万ケース程度(1ケースは大瓶20本換算)に引き上げる計画を固めたことが分かった。消費者の節約志向で「家飲み」が増える中、スーパーなどへの営業を強化する。また、酒税が段階的に一本化されることを受け、税率の下がるビールに力を入れる狙いもある。
黒ラベルは飲食店向けの業務用の販売比率が約65%と高く、家庭用は約35%にとどまる。一方、シェア首位のアサヒビール「スーパードライ」は業務用が約30%に対し、家庭用は約70%に達する。家庭用では黒ラベルのブランド力は弱く、棚を確保できていないスーパーも多い。
缶ビールは、業務用のように瓶やたるを回収する必要がなく、利益率が高い。こうした背景もあり、サッポロは家庭用の販売比率を引き上げることにした。
同社は2015年から東京と大阪で黒ラベルのビアガーデンを開設。さらに、体験イベントを全国で催すなどブランド力を強化している。これらの取り組みが功を奏し、同年のビール販売は21年ぶりに前年実績を上回り、16年も前年比でプラスとなった。
特に地盤が弱かった西日本や首都圏のスーパーにも販路を広げつつある。今後は地域ごとのマーケティング活動を細分化し、黒ラベルがまだ浸透していない地域への売り込みを強化する。
ビール、発泡酒、第3のビールの酒税は26年までに3段階で350ミリリットル缶当たり54.25円に一本化され、ビールは現在の77円から減税となる。ビールの販売比率が比較的高いサッポロビールには追い風だ。
アサヒビールもビールに強く、減税による売り上げ増に期待をかける。今年はスーパードライの発売30周年限定商品を相次いで投入。「家庭用缶ビールは前年比で約1%増の販売を見込む」(幹部)
ただ、昨年のビール課税出荷数量は2年ぶりのマイナスで特に業務用が伸び悩んだ。こうした消費者の節約志向を踏まえ、他社も家庭用缶ビールを強化。キリンビールは地域ごとに味わいが違う「47都道府県の一番搾り」を昨年に引き続き4月から順次発売。サントリービールも高級ビール「ザ・プレミアム・モルツ」を5年ぶりに刷新する。ビール各社の顧客争奪戦が激化しそうだ。
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