「ストロングゼロ」の挑戦
21世紀を拓く 知の創造者たち□サントリースピリッツ
■「-196℃製法」で新たな価値提供
「RTD」というアルコール飲料が近年、右肩上がりで売れている。RTDとは「Ready to Drink」の略で、そのまますぐ飲める缶チューハイや缶カクテルなど低アルコール飲料のことだ。2016年の市場規模は1億6800万ケース(1ケース250ミリリットル×24本換算)で、前年比112%となった。こうした中で、缶チューハイ「-196℃ストロングゼロ」を軸にさらなる販売拡大を狙うサントリーは、リニューアルした「-196℃ストロングゼロ(定番6品目)」の新テレビCMを2月7日から投入するなど、積極的なプロモーションを行う。そこで、RTD事業を手掛けるサントリースピリッツRTD部の初川良輔氏と商品開発研究部の上井達也氏、横山和典氏に開発のポイントや今後の目標などを聞いた。
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□初川良輔さん 常に新しい提案を
▽はつかわ・りょうすけ RTD部
□上井達也さん 味わいを作り分け
▽うえい・たつや 商品開発研究部
□横山和典さん 海外向けの開発
▽よこやま・かずのり 商品開発研究部
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--RTD市場が拡大しています。その要因をどう見ていますか
初川 RTD市場の中でもアルコール度数8%以上の高アルコール類が伸びており、16年は前年比117%の5650万ケースになったと推定しています。その過半数の3120万ケースが「-196℃ストロングゼロ」です。近年は<ドライ>や<ビターレモン>という甘くないタイプの商品を強化してきました。それによって食事と一緒に飲む人が増えたことや今までRTDを飲まなかった人が購入するようになったことも販売増につがなった一因と考えています。
--「-196℃製法」とはどういうものですか。また、レモン味の商品が2つありますが、違いは何ですか
横山 厳選したこだわりの果実をまるごと-196℃で瞬間凍結し、パウダー状に粉砕してアルコールに浸漬する方法で、本物の果実の味わいが得られるのが特長です。11年12月に特許を取得しています。
上井 レモン味では、<ダブルレモン>と<ビターレモン>がありますが、レモン果汁に加えてレモンをまるごと使用することでしっかりとしたレモン感が味わえるのが<ダブルレモン>です。昨年7月に発売した<ビターレモン>は、-196℃製法を用いて凍結粉砕したレモンの果皮(ピール)を使用しているので、ほろ苦い味を楽しむことができます。「しっかり果実感」の<ダブルレモン>に対して、<ビターレモン>は「甘くないレモン」をコンセプトに開発しました。作り分けができるのも-196℃製法の強みです。
--商品開発で苦労した点はどこですか
上井 チューハイで最も大きいのがレモン市場ですが、<ダブルレモン>という商品があるにもかかわらず<ビターレモン>という新たな商品を投入するにあたり、どう差別化を図るのかということが難しかったです。-196℃製法でまるごとレモンとレモンピールを使い分けることで、甘さを抑えてレモンピールのほろ苦さを引き出した中味づくりを目指しました。また、ピールも単純に入れればよいというものではなく、味わいをしっかり出すための量や浸漬時間の調整が難しかったです。配合の組み立てが難しく、試作は100を超えました。
横山 ピールの品質評価を担当しました。-196℃製法では収穫後に防腐剤などを使用した果実は使いません。今回、新しい原料としてレモンピールを採用するにあたり、購入する果実がその条件をクリアしているか、そして、使用前にしっかりと洗浄され、異物や汚れが取り除かれているのかを確認をすることに苦労しました。
初川 同一ブランドからレモンフレーバーの商品が2つ発売されることで、社内でもお客さまが重なってしまうのではないかという懸念がありました。レモンピールによるビターな味わいという新しい価値をお客さまに伝えることが難しかったです。この仕事を通じて、消費者に新たな価値を提供し続けていく大切さを改めて自覚しました。
--入社してからさまざま仕事に携わってきたと思いますが、今回のプロジェクトでこれまでの経験が生かされた部分はありますか
初川 私は営業現場でスーパーマーケットを担当したのち、営業推進部でウイスキーの販促業務を行ってきました。お客さまに近い立場で、いかにブランドを認知してもらい、購買につなげていくかを考え続けた経験は、「-196℃ストロングゼロ」のマーケティングを担う上で貴重な糧になっています。日々変化する市場の中で、お客さまへ常に新しい提案をしていかないと生き残れないということが身にしみてわかりました。
上井 私は中途入社でそれまで飲料関係の仕事ではなかったので、酒づくりの常識を知りませんでしたが、自由に仕事をさせていただいて結果的に評価してもらえる商品が開発できたことは楽しかったです。経験がなかった分だけ、逆にフラットな考えで開発に取り組めました。
横山 入社後は、大阪工場で工場オペレーションとスタッフ業務を担当しました。その後、RTDの中味の開発を経て、約2年前に<ビターレモン>の原料担当になりました。工場とRTDの中味開発、原料を経験したことで、品質保証についての知見を得ました。今回のプロジェクトでもそれが大いに生かされています。
--今後の目標をお聞かせください
初川 「-196℃ストロングゼロ」の魅力を伝え続け、お客さまに手にとっていただけるよう、「-196℃ストロングゼロ」の良さを感じてもらえる環境づくりや商品展開を高い感度を持ってやっていきたいです。今後も自社商品に直接携わるさまざまな仕事にチャレンジしていきたいです。
上井 <ビターレモン>の開発では、レモンをまるごと使いながら、さらにピールという違う部位を活用することで新しい価値を提供ができたと思っています。今回は異なる2つのレモンの味わいを作り出しましたが、今後はさまざまな果実を用いて、味わいの作り分けを-196℃製法で実現していきたいです。私は中味の開発にやりがいを感じていますので、ストロングゼロ以外の商品などでも、-196℃製法の特長を利用して新たな製品開発を1、2年くらいの間にできればと思っています。
横山 今回、<ダブルレモン>と<ビターレモン>で食中需要を加速させたいという思いで開発しました。<ビターレモン>は甘くない、苦みがあってさっぱりというのが売りですが、食中需要をさらに取り込むための新しい価値の提案ができれば面白いと考えています。また、海外向けのRTD開発も手掛けてみたいです。ストロングゼロは大きなブランドですが国内向けなので、-196℃製法の強みを生かして海外のお客さまに喜んでもらえる商品開発をしてみたいです。
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【会社概要】サントリースピリッツ
◇本社=東京都港区台場2-3-3
◇代表取締役社長=仙波匠氏
◇設立=2015年1月1日
◇資本金=150億円
◇事業内容=国内のスピリッツ事業
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フジサンケイビジネスアイは「独創性を拓く 先端技術大賞表彰制度」を設けております。このシリーズは2016年の運営に協力いただきました協賛企業の研究開発活動を紹介するものです。
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