(上)地銀、再編圧力に追い打ち 融資獲得より利益改善を

検証マイナス金利
みちのく銀行では支店や本部の行員が集まって地元企業の利益改善に向けた議論をしている=青森市

地銀各行、地元企業への「目利き力」強化

 「息子さんが当行の経営塾に参加されましたね。そろそろバトンタッチをお考えですか」

 貸し出し以外に手数料を得られる関係に発展したきっかけは、このひと言だった。直前の営業戦略会議で、本部からの出席者が経営塾の話をしていたのを思い出してのことだった。みちのく銀行(青森市)のある法人営業担当者は昨年夏、地元の建設会社経営者から事業承継の相談を受け、外部のコンサルティング会社を紹介した。

再編圧力に追い打ち

 大都市への人口流出や少子高齢化が続く中、地方銀行には金融庁による再編圧力が高まっている。追い打ちをかけたのが、超低金利環境だ。保有する国債の価格上昇(利回りは低下)で、多くの地銀は大規模金融緩和前の決算水準を保つ。ただ、預貸の利ざやが縮小し、ビジネスモデルの変革を迫られている。

 そこで、みちのく銀は法人営業戦略を見直し、融資獲得よりも「営業利益の改善」を重視する考え方に切り替えた。鍵となるのが行内の情報共有の徹底だ。

 以前は融資契約を取り付けた後は足が遠のくこともあったが、今は営業担当者は毎月必ず取引先を訪問し、経営者の相談に乗る。工場を見学したり、営業会議に顔を出す行員もいる。

 各支店で週1回開く営業戦略会議は、参加者を本部や近隣の支店にも拡大した。若手行員にとってはベテランの営業ノウハウやさまざまな業種の事例を吸収する好機でもある。

 この結果、同行の貸出金利息収入は2012年3月期の248億円から、16年3月は213億円まで減少。一方、手数料収入は14億円から31億円に倍増。今期も勢いは衰えていない。

 「事業計画や販路、商品構成など、企業は生き物のように姿を変える。取引先と“共通言語”で話せるようになってこそ、地銀の営業だ」。同行で法人営業戦略の中核を担うKeyMan推進部の斉藤直人部長は胸を張る。日銀によると、昨年12月時点の全国の銀行の新規貸出約定平均金利は0.7%で、この5年間で4割近く縮小した。マイナス金利導入後は0.6%台にまで沈む月もあり、強い金利低下圧力がかかっている。

手数料獲得でヒット

 金利低下に苦しんでいるのは地銀だけではない。「金利競争は深追いしない」と明かすのは、あおぞら銀行の青山裕ビジネスバンキング本部長だ。同行は昨年7月、法人営業関連部署にまたがる形で、企業再生や会計・財務、M&A(企業の合併・買収)などの各分野に精通した専門家を配置。他行とは違った営業提案によって「融資や手数料獲得のヒット率を上げる」(青山氏)作戦だ。

 農林中金総合研究所の古江晋也氏は「企業の成長段階に応じた戦略や地域の産業の特色に合わせた融資の実行ができる地銀となることが一層求められている」と指摘する。マイナス金利開始の衝撃から1年がたち、地銀側も目利き力の発揮に本気を出してきた。

 日銀がマイナス金利政策を導入して16日で1年。「劇薬」とも言われるマイナス金利を検証する。