遊技産業の視点 Weekly View

 □ワールド・ワイズ・ジャパン代表、LOGOSプロジェクト主幹・濱口理佳

 ■無知が生むパチンコ誤認 正す努力を

 カジノ一つをつくるのに、遊技業界がどうしてここまでやり玉に挙げられ、追い詰められなければならないのか。ギャンブル依存症にせよ、誰かが「カジノができると依存症が問題だ」と言い出すと、「パチンコはどうなのか」と矢が飛んでくる。

 パチンコは風営法で厳しく規制された娯楽であるにもかかわらず、ギャンブルと並列に扱われ、しかも「パチンコは依存に対して何もしてこなかった」などと吹聴する人も出てくる始末。実際、業界は遊技への過度なのめり込み(依存)問題にかねて積極的に取り組んできた。業界団体が支援して2006年に設立した「認定特定非営利活動法人リカバリーサポート・ネットワーク」もその一つだが、無料の電話相談を実施するほか、自助グループへの橋渡しや、司法書士会・弁護士会を紹介するなど、公的機関とも連携を取りながら問題解決をサポートしている。本来ならば、自らの無知が原因で誤った情報を発信したことに対し、発言者は潔く謝罪すべきであるのに、今度はパチンコに対する世間の無関心をよいことに、放置を決め込む。

 加えて、「パチンコで生活費を使ったから万引した」「パチンコ代欲しさに横領した」と便利な言い訳のように“パチンコ”が使われ、ニュースで垂れ流される日々。常識的に考えても、パチンコだけが理由でないことは分かるのだが、パチンコをしない人にとっては、その真意も詳細も「どうでもよい」。テレビからそう聞こえてきたら、パチンコは犯罪の原因になることが多い娯楽だと誤認する。カジノは何万人の雇用を創出するとアピールするIR推進派の議員の言葉も、パチンコホールだけで30万人近い雇用を創出している事実(総務省・経産省の経済センサス調査などで数値発表)に照らせば、こちらの雇用を守るほうが大事だ。この雇用を守り、プラス雇用を創出するのでなければ、カジノの実現理由は薄れてしまう。

 人々の生活に寄り添う大衆娯楽でありながら、適切にその産業の実態を社会に公開してこなかった非は遊技業界にもあるが、そろそろ正確な認知を仰ぐ取り組みに本腰を入れてはいかがだろうか。

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【プロフィル】濱口理佳

 はまぐち・りか 関西大学大学院文学研究科哲学専修博士課程前期課程修了。学生時代に朝日新聞でコラムニストデビュー。「インテリジェンスの提供」をコアにワールド・ワイズ・ジャパンを設立。2011年、有志と“LOGOSプロジェクト”を立ち上げた。