日航、「ドル箱路線」羽田-NY便で攻勢 解けた制約、ANAと“ガチンコ勝負”へ
航空各社が国土交通省に申請する2017年度の国際線運航計画が2月9日に締め切られ、日本航空は羽田-米ニューヨーク(NY)便の運航を4月1日から始める計画を提出した。NY便は昨年2月の日米航空協議で配分された増便枠を充てた路線で、経営破綻に伴う公的支援を受けた日航が、政府による新規路線の開設制限から自由になったことを意味する。ライバルのANAホールディングス(HD)は「公的支援による格差は残っている」としつつ“ガチンコ勝負”を受けて立つ構えだ。
事前協議でお墨付き
「国内線から北米への乗り継ぎで利便性が一層高まる」。1月19日に17年夏ダイヤの概要を発表した日航の担当者は、39年ぶりとなる「ドル箱路線」復活に期待をにじませた。
都心に近い羽田発の路線はビジネス需要が高いが、昨年夏まで米国路線の発着枠は深夜・早朝時間帯に限られ、到着時刻が深夜・早朝になるNY便の運航は難しかった。だが昨年2月の日米合意で昼時間帯の発着が可能になり、潮目が変わった。
羽田-NY便の開設に合わせ、日航は成田-NY便を1日2往復から1往復に減便するが、残す便の航空機材を大型化し、ファーストクラスを設けるなど攻勢を強める構えだ。
航空各社の夏ダイヤは3月26日からだが、日航のNY線開設が4月1日からなのには理由がある。国交省が日航に対する、新規路線の開設や投資などの制限などを記した「8・10ペーパー」の効力が16年度で切れる見通しが立ったためだ。
8・10ペーパーとは10年に経営破綻した日航が3500億円の政府支援を受けたことに伴い、国交省が12年8月10日に「競争環境の是正」を名目に出した政府の公式見解。この理念を受け継ぐ形で、羽田の発着枠も増枠のたびにANAHD傘下の全日本空輸へ多く配分されてきた。今回の昼時間帯における米国便の羽田発着枠も、全日空に4便が配分されたのに対して日航に配分されたのは2便だ。
それだけに日航は今回、新規路線の開設が許されるのか国交省と水面下の協議を重ねていたようだ。NY便開設を明らかにした際、「国交省には報道発表をすると伝えてある」として“お墨付き”の存在を示唆。石井啓一国交相も翌日の会見で「健全な競争環境の確保が図られてきたという認識だ」として4月以降の是正措置を行わない考えを示した。
傾斜配分枠で対抗
新年度からは、呪縛を解かれた日航と全日空の“制空権争い”が本格化しそうだ。
日航は経営破綻後のスリム化や税制措置などで財務体質や利益率で優位にあり、積極的な投資戦略が可能で、全日空側は「本気で攻めてきたら脅威」と警戒。同社幹部は「われわれには(財務上)できないことを日航がしてきたら、声を大にして是正措置を訴える」とした。
全日空は、3回に渡り傾斜配分された、1枠当たり年間約20億円の利益とも試算される羽田の国際線発着枠が武器になる。夏ダイヤではビジネス需要が高まる羽田-ジャカルタ(インドネシア)便を1日1往復から2往復に増便。ジャカルタ便が成田発に限られる日航との差別化も狙う。
航空行政に詳しい東洋大学の島川崇教授は「政治的な制約がこれ以上長引くことは正常とはいえない」と8・10ペーパーの期限切れを評価。その上で「全日空も傾斜配分された羽田枠の強みがあり、両社がしのぎを削り合えば消費者にもプラスになる」と指摘している。(佐久間修志)
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