ヴァーチャルのイケメン男子がアイドルや広告代理店の社員に キャラクターの新しい形を提案
ゲームやアニメーション、漫画に登場するキャラクターが人気となるのは普通の光景。特定の作品発ではないキャラクターに様々な活動を行わせることで関心を集め、プロジェクトとして大きくしていこうとする動きが出てきている。ゲーム会社のユークス(大阪府堺市堺区)では、4人の男性キャラクターを特殊な技術で実際のステージに立たせるライブを開催。バンダイナムコエンターテインメント(東京都港区)では、架空の広告代理店を作って9人のイケメン男子を社員にし、実在する商品のPR業務を担当させるプロジェクトを発足させた。
3月29日、音楽レーベルのエイベックストラックスから1枚のCDが発売される。タイトルは「A’LIVE」でアーティスト名は「ARP」。ソロのシンジとレオン、レイジとダイヤの2人組によるレベルクロスの楽曲が収録されている。この4人は、いずれも肉体を持った存在ではない。ユークスが展開する「AR performers」というプロジェクトから生まれたヴァーチャルのパフォーマーたちだ。
1月14日と15日に臨海副都心のディファ有明で行われたイベント「AR performers 1st A’LIVE」に4人は登場して、観客の前でパフォーマンスを披露した。ステージ上にはられた半透明のスクリーンに、CGで描かれたキャラクターを投影し、歌や会話に合わせて動かすといったものだが、ここで驚くのは、あらかじめ決められた動きをしている訳ではないということ。セリフも事前に収録されたものではない。ステージ上でキャラクターたちどうし、そして司会や観客席も交えてリアルタイムに会話をし、それに見合ったリアクションをとりながら動き回る。
動きを担当する人が行うダンスなどのモーションをカメラで取り込み、CGのキャラクターに反映させ、それに現場で声を乗せることで、あたかもその場にシンジやレベルクロス、レオンたちが存在するように感じさせる。コナミデジタルエンタテインメントで「ラブプラス」「ときめきメモリアル Girl’s Side」などを手掛けた内田明理プロデューサーがユークスに移り、新しいエンターテインメントコンテンツとして立ちあげた。
昨年4月に東京・秋葉原で「β LIVE」を行って技術などを確認。リアルタイムでのリアクションが来場者との一体感を生むことも分かった。そして迎えた「AR performers 1st A’LIVE」では、キャラクターとしてレオンが新たに加わり、シンジやレベルクロスと交互に対決しながら応援の多さを競い合うイベントも行われた。来場者が専用アプリを導入したスマートフォンを振ることで、どちらがより多く応援されているかを競うもの。これなども、動きや会話があらかじめ仕込まれていては不可能なイベントだ。
半透明のスクリーンにキャラクターを投影してパフォーマンスを見せるライブは、初音ミクのものを始め幾つも行われているが、キャラクター間の当意即妙な会話の面白さや、観客との密なコミュニケーションは「AR performers」が際立つ。キャラクターとして立ちあがり、ライブ活動を通じて人気を得ていく点もユニークで、新時代のパフォーマーとしてこれからの活躍に期待がかかる。
実在しない広告代理店に所属する実在しないイケメン男子社員たちが、実在する商品などのPR企画を立案して発信していくプロジェクトも立ちあがった。バンダイナムコエンターテインメントが2月22日に発表したヴァーチャル広告代理店プロジェクト「城崎広告」だ。個性を持ったキャラクターたちが、ネット上でセールスやクリエイティブなどの業務をこなしていく姿を楽しんでもらいつつ、PRを引き受けている商品への関心も高めていく。
「城崎広告」には城崎律子社長以下、9人の男子が社員として所属して、営業部、企画部、事業推進部で仕事に励んでいる。それぞれに性格や得意な仕事、趣味などが設定してあって、自分が好きそうなキャラクターを見つけて追いかける楽しみ方もできる。
プロジェクトでは3種類のウェブサイトを用意して、それぞれに違ったコンテンツを発信していく。公式サイトでは一般企業のサイトと同様、「城崎広告」という会社の事業概要や社員の紹介を行っている。PRサイトでは広告代理店として「城崎広告」が請け負った案件を紹介する。こうした表サイトの間を埋めるように設置する社員専用サイトが、「城崎広告」プロジェクトの大きな特徴。社員たちが議事録や連絡事項といった体裁でPRの仕事をどのようにこなし、問題を乗り越えているかを明かして、キャラクターへの関心を誘っていく。
ドラマや映画の主人公に近い存在感を持つようになった社員たちが、日々の仕事をどうこなしているかをストーリー仕立てで見せることで、キャラクターへのファンの共感を誘う。同時に、社員たちが担当している案件で対象になっている商品への共感も高めて、実際のPRにつなげていく。
「城崎広告」がPRする第1弾商品は、サンスター文具が販売しているポーチからペンスタンドへと3秒で早変わりする「DELDE」。女子高生を中心に人気になっているこの商品を、「城崎広告」の社員たちが担当し、ターゲットの拡大や販売の強化につながるPR企画を立案して、8週間にわたって展開していく。
「AR performers」も「城崎広告」も、ゲーム発ではなく、漫画やアニメーションからの流用でもないキャラクターたちが、ライブ活動やPR業務を行う姿を見せることで、ファンといっしょに成長していく楽しみを与えようとしている。こうした手法は、人気作品ありきのキャラクタービジネスに新しい可能性を広げそうだ。
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