□ホールマーケティングコンサルタント LOGOSプロジェクト上級研究員・岸本正一
■遊技人口回復のキーワード「安くて面白い」
最近、ちょっとした試算をして改めて驚いたことがある。それは、パチンコ・パチスロの標準貸玉料金である「4円パチンコ」や「20円パチスロ」で遊技する人が、業界ピーク時と比較して激減していることだ。
現在、全国のパチンコホールに設置されている遊技機は、私の試算ではその約38%が低貸玉料金による営業に用いられており、標準貸玉料金による営業に用いられているのは約62%となる。公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書2016」のデータでは、現在の遊技参加人口は1070万人だが、これに当てはめると単純計算で663万人。さらに「遊技人口3000万人」と言われたピーク時に低貸玉営業が存在しなかったことを考えると、標準貸玉料金で遊ぶプレーヤーはわずか22%にまで減少したことになる。
内閣府の「国民生活に関する世論調査」を見れば、レジャー・余暇生活に対する「今後の生活の力点」としての期待は依然として高い。しかしながら、標準貸玉料金で遊ぶパチンコプレーヤーは減少傾向にあり、遊技を継続する人ですら、その多くが低貸玉料金コーナーに流れている。この結果を見ていると、国民のレジャーに対するニーズと現在の標準貸玉料金のパチンコの実態の間に、何やら「ズレ」が生じているように思えてならない。
消費者の反応はいかなるマーケットにおいても正直だ。おいしいものは売れるし、便利なものを人は欲しがる。しかし、それは価格を考慮した上での話。いくらおいしい料理でも、一般的なサラリーマンは1回のランチに3000円は使わないだろう。
パチンコは玉を発射して、くぎに行く手を阻まれながらもそれを入賞させ、その玉を増やすことを楽しむ遊びだ。高度経済成長期を駆け抜けた私の父たちがそれに熱中したように、世代が違う私にとってもその遊びの本質は単純に「面白い」と感じる。ただ、その面白さが「高級ランチ」となっては手が出ない。本気で遊技人口回復を目指すのであれば、「安くて面白い」というキーワードは絶対に外せないと強く感じる。
◇
【プロフィル】岸本正一
きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。
関連記事