ピコナ 回数限定チケットなど奏功 アニメ製作現場で残業を大幅

 
コンピューターを使ったアニメ作品の製作現場=東京都大田区のピコナ本社(同社提供)

 アニメーション製作のピコナ(東京都大田区)は、会社が従業員に月5枚支給する「残業チケット」を導入。導入からわずか3年余りで、従業員平均で月100時間以上だった残業時間が25時間前後にまで減少した。労働時間を一定の条件のもとで自由に決められるフレックス制度も取り入れ、子育てや介護など家庭の事情を抱えた従業員でも安心して働ける職場環境づくりに力を入れている。

 同社は創業から10年にも満たない若い会社。創業当初は長時間の残業が当たり前で、辞める従業員が後を絶たなかった。新卒者向け会社説明会を開いても「残業が多くて休めなさそうとのイメージが強く、人材確保がままならなかった」(吉田健社長)という。

 そんな吉田社長は2012年にヘルニアを患い、2週間余りの入院を余儀なくされた。

 「このままでは身体が持たない」-。そう考えた吉田社長は働き方改革に乗り出す。

 職場復帰した吉田社長はまず毎週水曜日を「ノー残業デー」と決めた。ただ水曜日の仕事を他の曜日に移しただけの社員が多く、大きな成果は出せなかった。そこで「それなら残業できる回数を決めればうまくいくのでは」と考え、13年11月に残業チケット制を導入した。

 残業できるチケットは社内LAN(構内情報通信網)を通じて配布される。チケットを使えば月5回まで午後9時以降も残業できるが、事前にチケットと残業届を会社に提出し、社長の承認を得ることを条件とした。申請の際には社長のチェックが入り、必要性がないと判断された場合は却下される。

 それまでは何となく会社に残っている社員も多かったが、チケット制にしたことで、「どうすれば残業せずに済むかを社員自らが考え、仕事の優先順位が付けられるようになった」(吉田社長)という。仕事の進め方が分からない新人社員を先輩社員がアドバイスするなど、チームワークで仕事ができるようになった。

 さらに15年11月にはフレックス制度を導入。午前11時~午後3時を必ず業務にあたるコアタイムに設定し、月30日の場合の労働時間を171時間、同31日で177時間と規定した。社員からは「早く帰れて自分の時間が持てる」とか「作品の仕上がりの質が上げられる」といった声があがっている。

 15年に大手広告代理店、電通の女性社員が過労を苦に自殺し、社会に大きな衝撃を与えた。アニメ製作会社は、仕事量の確保などを理由に、無理な仕事を受注しがちで、それが長時間労働につながっているとの指摘もある。

 吉田社長は「長時間労働が若い才能とその可能性を狭めている。アニメ業界も若い人にも希望が持てるような環境を整えることが大切だ」と、働き方改革の必要性を訴える。

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【会社概要】ピコナ

 ▽本社=東京都大田区田園調布2-5-10

 ▽設立=2009年3月

 ▽資本金=500万円

 ▽従業員=15人

 ▽事業内容=コンピューターグラフィックスを使ったアニメーション製作