遊技産業の視点 Weekly View

 □シークエンス取締役、LOGOSインテリジェンスフェロー・木村和史

 ■ワシントンの事例、日本版IRの手掛かりに

 昨年12月、米国の首都、ワシントン近郊にオープンしたカジノを含む統合型リゾートホテル「MGMナショナル・ハーバー」の総投資額は約14億ドル、ホテルの客室は約300室。施設はメリーランド州で6カ所目となるカジノをはじめ、会議場、劇場、プールなどで構成されている。カジノはテーブルゲームが160台、スロットマシンは約3000台が設置されている。対象となるマーケットとしては、まず至近のワシントンや隣接するバージニア州となる。これらの州では、いずれも一般的なカジノの許可が下りていないため市場としてのポテンシャルがある。

 とりわけワシントンの住民は高級官僚、中央官庁に努めるホワイトカラー層が多く、居住外国人も各国政府関係者などが中心のため、全米では最も可処分所得の高い層が住んでいる。しかし、アミューズメントおよびレジャーに関しては、首都機能を有するためカジノなど各賭博種はもとより、大型レジャー施設などの建設も物理的な意味を含めて規制されており、市民はこれまで、同じメリーランド州でも車で1時間半ほど離れたボルティモアや、その手前のコロンビアまでカジノを含めレジャーなどで足を伸ばすしかなかった。今回の統合型リゾート施設のオープンは、さまざまなアメニティーに対しての市民の需要を補完することになり、期待を持って迎えられたに相違ない。

 このように、何かとデオドラントなワシントンという地域が求める渇望、そして居住民の需給バランスを均衡させるかのごとく進化するナショナル・ハーバー、そして、あたかも必然であるかのように誕生した今回の統合型リゾート施設を目の当たりにして、日本版IRを想起するとき、さしずめ、国家主導型の経済効果、観光振興という部分が原初的かつ無機的に話題となる中で、改めて建設される地域、そこに居住する民の、ふつふつと湧きあがる内発的な渇望、この必然的な需要をくみ取れて初めて成功という青写真に至るのではないかと感じた。今回のワシントン状況を知ることは、日本版IRのパースを描く重要な手掛かりとなるに違いない。

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【プロフィル】木村和史

 きむら・かずし 1970年生まれ。同志社大学経済学部卒。大手シンクタンク勤務時代に遊技業界の調査やコンサルティング、書籍編集に携わる。現在は独立し、雑誌「シークエンス」の取締役を務める傍ら、アジア情勢のレポート執筆などを手掛ける。