チャレナジー プロペラなし風力、台風でも安定発電

eco最前線を聞く
清水敦史社長

 □チャレナジー・清水敦史社長

 再生可能エネルギー普及のカギを握る風力発電だが、台風のような強風時には、せっかくの風を発電に生かせない。風車のプロペラが破損する恐れがあるためだが、そのプロペラをなくすことで強風時にも稼働する発電機の開発に取り組んでいるベンチャー企業、チャレナジー(東京都墨田区)の清水敦史社長に開発の現状と事業戦略を聞いた。

 ◆マグナス効果を利用

 --プロペラがなくて、どう発電するのか

 「プロペラの代わりに円柱を置いた『垂直軸型マグナス風力発電機』を開発している。マグナス効果を利用して、理論上は台風のような暴風時でも安定して発電できる」

 --マグナス効果とは

 「回転する円柱や球が風の中に置かれたとき、その風の流れの方向に対して垂直の方向に力が働く現象が起きる。それがマグナス効果だ。身近な例で言えば、野球でカーブを投げたときにボールが曲がるのも同じ原理だ」

 --開発はどこまで進んでいるのか

 「昨夏、沖縄県南城市に発電出力1キロワットの発電機を設置し、実証実験を行っている。台風接近時でも安定して発電し続けられることを確認できた」

 --なぜ風力発電機を開発しようと思ったのか

 「2011年3月の東日本大震災がきっかけだ。福島第1原子力発電所事故により計画停電が行われるなど電力危機となった。そのとき、われわれの世代が再生可能エネルギーへの転換の道筋を作るべきだと考えた。垂直軸型マグナス風力発電機の特許が取得できたのを機に、勤めていた会社を辞めることを決心した。起業支援を手掛けるリバネス(東京都新宿区)のビジネスプランコンテストで優勝したのを機に、チャレナジーを立ち上げた」

 --開発にあたって苦労した点は

 「プロペラを使わない風力発電機は前例が少ないだけに全てが手探りの状態。沖縄での実験では結露や塩害によるトラブルもあった。電気部品が結露でショートする恐れがあるため、シャンプーハットのようなカバーを部品に取り付けたりした。部品加工にあたっては、金属加工の浜野製作所(東京都墨田区)の協力も得られた。発電効率を上げることも課題だ」

 ◆20年までには販売

 --今後の戦略は

 「島嶼(とうしょ)部での独立電源としての使用を想定して開発を進めているが、出力1キロワット機では販路が限られる。そこで10キロワット機の開発に取り組む。円筒柱の高さは約10メートルで1キロワット機の3倍の大きさになる。量産試作に入り、20年までには販売できるようにしたい」

 --開発には多額の資金が必要となる

 「昨年10月、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から助成金を受けられることが決まったほか、リバネスなどが手がけるファンド(基金)や個人投資家を引受先とする第三者割当増資も実施し、総額で1億5000万円を調達した。20年以降の株式公開を目指し、市場から調達した資金でさらに大型の風力発電機を開発したい」

 --チャレナジーが目指す世界とは

 「台風のエネルギーを使った水素社会を実現させたい。1つの台風のエネルギーは世界の発電容量の半分に相当するという試算もあり、その一部を活用したい。さらに日本は海で囲まれている。洋上風力発電でつくった電気を使い、海水を分解して水素をつくり、その水素を貯蔵して必要なときにエネルギーとして使う。そんな時代をつくりたい」

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【プロフィル】清水敦史

 しみず・あつし 東大大学院新領域創成科学研究科修士課程修了。キーエンスを経て、2014年チャレナジーを設立し、社長に就く。37歳。岡山県出身。