猫と生活、iPadで対面営業 戸建住宅の販売戦略多様化

 
室内にキャットステップを設置した大和ハウスの戸建住宅=千葉県流山市

 大和ハウス工業は、多様な居住形態を提案する「これからの住まい方プロジェクト」事業を強化する。その一環として、猫と暮らすモデル住宅を23日に開設。また、家事を家族全員で分担する「家事シェアハウス」のモデルハウスを全国に広げていくほか、地域ニーズに応じた住宅を順次提案する計画だ。

 昨年秋から本格的に開始した同プロジェクトは「ソフトの提案を見える形で発信する」(佐藤文・住宅事業推進部営業統括部主任)ことを目的に掲げており、「猫と暮らすまちなかジーヴォ」(千葉県流山市)は第2弾。吹き抜け空間のキャットウオークや爪とぎ柱を設置するなど、猫の生活にも配慮した。同住宅はモデルハウス的な役割を果たし、希望者に販売する。

 第1弾の家事シェアハウスも分譲型のモデルハウス。現在は名古屋に開設しているが人気が高いため、他のエリアにも建設。今夏に見学会を実施し販売につなげていく。

 大手住宅メーカーの間では、一工夫凝らした販売戦略を導入する動きが相次いでいる。

 旭化成ホームズは、顧客との打ち合わせスタジオ「ヘーベルハウス トーキョープライムスクエア」を東京・新宿に開設した。「展示場に来場してから、住宅購入を判断するまでの期間が長期化している」(藤澤秀樹・東京営業本部長)ため、施設への来場を促すことで顧客の購入意欲を後押しする。目玉は360度の映像によって、約20事例の住空間をバーチャル見学できる体験型映像施設だ。

 積水ハウスは「iPad(アイパッド)」を活用した営業活動に力を入れており、現在は1万6000台以上が稼働している。

 特徴的なのは専用アプリ。全て内製化でIT部門の100人のスタッフが開発に携わっている。設計図に基づいた3Dイメージや、部材・色を変更した建物のイメージを顧客に提案できるアプリなど、顧客に対する提案力の向上に寄与している。

 ミサワホームは5階建てモデルハウスでの営業活動に力を入れ始めた。

 東京都墨田区にある「錦糸町住宅公園」に1月に出展した、重量鉄骨造で耐火構造の「アーバンセンチュリー」は同モデルハウスの第2弾だ。同区は大半が防火地域のため、耐火建築物とすることが求められるエリア。主に3階建て以上の潜在需要を掘り起こせると判断し、本格的な販売活動を開始した。

 足元の営業を取り巻く環境は厳しい。低金利など住宅購入の外部環境は整っているものの、消費増税の延期で購入を急ぐ動きが鈍っているからだ。

 今後の市場環境も「厳しくなるのは必至」(積水化学工業の関口俊一・専務執行役員)とみられており、各社の営業力の優劣が問われている。(伊藤俊祐)