大日本印刷「DNP採光フィルム」(2-1)
開発物語■光学フィルム技術応用、室内明るく
≪STORY≫
窓ガラスに貼るだけでさまざまな機能を発揮するウインドウフィルム。大日本印刷が開発した「DNP採光フィルム」は、太陽光を天井や部屋の奥まで取り入れ、北向きの日当たりの悪い室内でもフィルムなしとの比較で最大約2倍明るくなる省エネ製品だ。採光フィルムの「跳ね上げ効果」で、太陽光を部屋の奥まで効率よく採り込むことに成功。同社が強みとする、ディスプレー向け光学フィルムで培った加工技術が貢献した。
ウインドウフィルムの用途は、紫外線カットや断熱、ガラス片の飛散防止などだ。近年は、日中の室内を明るくして電力消費量の削減につなげる採光フィルムが注目されている。
同社は2011年ごろから、液晶テレビやスマートフォンなどのディスプレーに使われている光学フィルムの設計や微細加工技術を生かし、採光フィルムの開発を進めていた。
開発は、住宅内装材を担う部署と、光学フィルムの設計部署が中心となった。「スマホのような小さな製品に使われている技術が、大きな窓にも使われるという発想は、当時の社内にはなかった」。両部署を管轄する山口正登常務執行役員はこう振り返る。
「開発を進めていくうちに、光学フィルムの技術を応用すれば、光を室内の奥まで取り込めそうだということは分かった」。設計を担当したABセンター第1本部技術開発ユニットの市川信彦・副ユニット長は自信を深めた。
ただ、スマホなどのディスプレー用に設計された光学フィルムを、ウインドウフィルムに転用するためには、改良すべき点がいくつかあった。
従来の光学フィルムは、表面にある凹凸のレンズで反射、拡散することにより光を制御している。この凹凸が原因で窓ガラスにフィルムをきれいに貼れなかったり、付着したほこりなどのごみを拭き取る際に表面を傷つけてしまったりする課題があった。
「このままでは採光フィルムとしての商品価値がなかった」(山口さん)。そこで、凹凸のレンズを表面ではなく厚さ0.3~0.4ミリのフィルム内部に埋め込み、表面を平滑にした。これは、同社が持つプロジェクションスクリーンの加工技術の応用だった。
14年春には、同社の研究開発センター(千葉県柏市)の駐車場に実証実験棟を建設した。プレハブ平屋建てで、高さ2.2メートル、4メートル四方の室内を2つに分けて、採光フィルムを使用した場合としない場合で比較する実験などを行った。曇天で北向きの窓の場合、採光フィルムがあった方がなかった方より最大約2倍の明るさで、照明の電力消費量は13%削減できたことが分かった。
市川さんは「晴れた日もあれば曇りの日もあり、さらに東西南北の方向もある太陽光を効率的にコントロールするように設計するのが難しかった」と話す。使用する材料の光学特性や構造の最適化を図り、年間を通じて効率よく太陽光を採り込むことに成功した。
実験を進めるうちに、DNP採光フィルムの予期しなかった特長が見つかった。現場施工用のDNP採光フィルムは、透明なガラスに貼り付けるとすりガラス調になりプライバシーを確保できる。さらに隣棟との距離が近い場合でも、窓面が明るくなることで隣棟の壁の圧迫感を低減することが分かった。
実証実験を行った同ユニット開発1部開発第1課の守谷徳久課長は「部屋の隅が暗いと、人は圧迫感を感じてしまう。しかし、DNP採光フィルムを使えば部屋の奥まで明るくなり、空間を広く感じた」と話す。
こうした特長は、都心の戸建てに住んで日照不足に悩む人などから関心を集めそうだ。同社は現在、光を効率的に反射できる天井材も導入しており、さらなる明るい生活空間の創造を提案するつもりだ。
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≪KEY WORD≫
DNP採光フィルム 大日本印刷が開発したウインドウフィルム。太陽光を効率的に取り込んで室内を明るくして照明の電力消費量を節約できるほか、窓から侵入する紫外線を99%、赤外線を50%カットする。飛散防止効果があり、窓ガラスが割れた際にガラスの飛散を抑制する。
2015年10月発売の採光フィルムを2枚のガラスに挟んで使用する「合わせガラス用」と、16年1月発売の窓に貼り付けるタイプ「現場施工用」がある。
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