東芝株、上場廃止へ警戒感広がる 立ちはだかる3つのハードル
経営再建中の東芝の株式が上場廃止になることへの警戒感が広がっている。2度延期した平成28年4~12月期決算の発表がまた先送りされる恐れ▽日本取引所グループ(JPX)傘下の日本取引所自主規制法人による内部管理体制の再審査▽2年連続で債務超過となることへの懸念-の3つのハードルが立ちふさがる。仮に上場廃止となれば、影響は東芝の株主に限らず、幅広く及びそうだ。(森田晶宏)
差し迫ったハードルは、遅れに遅れている法定の四半期報告書の提出だ。
東芝は28年4~12月期決算の内容を盛り込んだ四半期報告書の提出期限を2度延期した。現行の期限である11日が迫るが、そこでも提出できず、3度目の延期を関東財務局に申請しても承認されない場合は、8営業日後の21日が最終期限となり、上場廃止が一挙に現実味を帯びてくる。
ただ、延期申請に回数の制限はない。「当局は東芝株の上場廃止の引き金となる判断には傾かず、3度目の延期が申請されても理由を吟味した上で承認するのでは」との見方もある。
2つ目のハードルは、JPX傘下の自主規制法人が担当している東芝の内部管理体制をめぐる再審査だ。
東芝は不正会計問題を受けて27年9月に東京証券取引所から、内部管理体制に問題があると投資家に知らせる「特設注意市場銘柄」に指定された。28年9月から約3カ月にわたった審査では“合格”に至らず、今年3月15日に東芝は改善状況や再発防止策を記した書類を東証に改めて提出し、自主規制法人が再審査を進めている。結論は上場維持か上場廃止かのどちらかだが、慎重を期すとみられ、数カ月はかかりそうだ。
東芝が東証に書類を提出した後の3月29日、経営危機の原因となった米原子力子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)は連邦破産法11条の適用を申請して経営破綻。東芝の連結決算の対象からは外れた。これにより自主規制法人による再審査の範囲が絞られる可能性もある。ただ、東芝はなお多くの海外子会社を擁しており、海外子会社全体への監督が機能しているかが重要な論点になるとみられる。
3つ目のハードルは、2年連続の債務超過懸念だ。
東証の有価証券上場規程では、決算期末に2年連続で債務超過になると上場廃止となる。東芝は米原発事業の巨額損失を受けて29年3月期に債務超過に陥る見通しで、8月1日付で東証1部から2部に降格となるのが確実。稼ぎ頭の半導体事業を継承した新会社の株式の過半を29年度中に売却することで、2年連続の債務超過の回避を目指す。
ただ、市場関係者の間では、東芝が米原発事業の巨額損失に関連して28年3月期決算を修正した場合、2年連続の債務超過となり、上場規程に抵触しかねないとの懸念も浮上している。
東芝の株主数は昨年3月末時点で約43万7千人。経営危機の影響で入れ替わりがあったとしても大規模といえる。「上場廃止という究極的な事態は絶対に避けてほしい。そのような事態に至らないよう全力を挙げて努力してほしい」。日本証券業協会の稲野和利会長は3月の記者会見で東芝にこう注文した。
3つのハードルのうち1つでもつまずけば上場廃止に直結してくるため、東芝を取り巻く環境は厳しい。
関連記事