ASEAN進出、賞味期限あと2年

高論卓説

 ■高度成長期のサービス・文化産業に勝機

 先日、一般社団法人「ミャンマージャパン・SEDA東京」が主催するビジネス交流会に参加した。この団体は日本語が話せるミャンマー人1700人が参加する組合の日本支部で、ミャンマーと日本企業とのビジネスマッチング支援を行っている。

 2016年11月3日に、ミャンマーの事実上の最高指導者、アウン・サン・スー・チー氏来日に合わせて、安倍晋三首相が同国に対して今後5年間で8000億円の借款を行う約束をしたが、この交流会を主催する関係者からは「日本の中小企業がミャンマーに有利に展開できる賞味有効期限はあと残り2年だ」と強調する声が多く聞かれた。その理由は、年々良質の合弁相手は減る一方であり、他の外国企業が先に進出して、獲得されてしまったマーケットでは、後から参入しても遅く、事業は成功しないということ。

 「モンキーセオリー」という概念がある。これは、インターネットの黎明(れいめい)期によく言われていたことだが、ビジネスモデルのプラットホームを変えない限り、2番手以降は1番を絶対に抜けないというセオリーである。ネットビジネスでは、競ってビジネスモデルを開発し1番になろうとした。なれない場合は、プラットホームを変えてその新しいプラットホーム上で1番になろうとした。そんな企業群が現在のネットビジネスを牽引(けんいん)している。皆がゴリラを目指したのだ。

 そんな意味で、経済成長が著しい東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で、最後のチャンスといわれるミャンマーで成功するためにも誰よりも早く参入してビジネスモデルを確立しなければならない。その期限があと2年だというのである。

 現在、私はタイで「HEROビジネス」を展開中だが、ASEANの先輩国であるタイの事例を見てみるとそれは歴史の中でうなずける。経済開発援助(ODA)などをバックに公共インフラ事業からスタートした日本とタイとのビジネス交流は、次に製造業が中心になり、自動車メーカーなどの大企業が現地で工場を造りタイ経済と深くつながっていった。

 さらに、コンビニエンスストアなどのサービス業が進出し、合弁会社が多く作られて日本ブランドが確立された。タイに進出した日本企業は、現在6000社を超えるようになっている。そこまではよかったのだが、経済成長に伴ってその後に市場が拡大した文化産業では韓国に完全に席巻されてしまった感がある。

 国策をバックにした家電メーカーと韓流ドラマ、K-POPの台頭である。これは現在タイを含めたASEAN各国に及ぶ。完全にこの分野では、韓国や最近では中国に主導権を握られている感がある。これら一連の流れは、進出するタイミングを逸すると取り返しがつかなくなることを端的に表している。ASEANビジネスでは、経済成長が進むにつれてプラットホームも変わっていくことを意識しなければならない。それは恐らく今後のアフリカでも同様であろう。

 話を交流会に戻す。ベトナムでビジネスをしているある講師は、ベトナムでもあと2年で賞味期限が切れるという。中小企業サービス業や文化産業にとって、途上国から高度成長国となっているASEAN各国への進出は、まさに今がチャンスであり、あと2年もたつと勝負が決まる。ASEANでの椅子取りゲームは最終コーナーである。

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【プロフィル】吉田就彦

 よしだ・なりひこ ヒットコンテンツ研究所社長。1979年ポニーキャニオン入社。音楽、映像などの制作、宣伝業務に20年間従事する。同社での最後の仕事は、国民的大ヒットとなった「だんご3兄弟」。退職後、ネットベンチャーの経営を経て、現在はデジタル事業戦略コンサルティングを行っている傍ら、ASEANにHEROビジネスを展開中。60歳。富山県出身。