「鹿島酒蔵ツーリズム」に8万人の来訪者

Sakeから観光立国
鹿島酒蔵ツーリズムを楽しむ観光客でにぎわう酒蔵通り=3月26日、佐賀県鹿島市

 □平出淑恵(酒サムライコーディネーター)

 6年目を迎えた佐賀県鹿島市の「鹿島酒蔵ツーリズム」が3月25、26の両日、開かれた。市内6つの蔵元の蔵開きと町歩きの祭りは、温泉で名高い隣の嬉野市の3つの蔵元とも連携し、過去最高となる8万人の来訪者を記録した。

 「鹿島酒蔵ツーリズム」は、2011年に市内にある富久千代酒造の「鍋島 大吟醸」が、世界最大規模のワイン審査会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)で「チャンピオン・サケ」に輝いたことがきっかけとなって始まった。

 「世界一の日本酒を輩出した地域」として市内の蔵元や市民、観光協会、行政が協力して翌12年の蔵開きの祭りを、市内を回遊する「酒蔵ツーリズム」というイベントとして大成功させた。その後、観光庁に発足した酒蔵ツーリズム推進協議会でも広く全国に紹介され、政府、他の県の自治体、酒造の関係者らの視察が絶えない。

 酒のイベントだけに会期中2日間は、無料シャトルバスを運行。イベント情報満載で割引クーポン付きの公式ガイドブックは300円で販売していた。市内6蔵が醸造した日本酒小瓶6本セット(各300ミリリットル入り、税別4000円)の限定1000本は、30分で完売したそうだ。

 筆者も、ますます輝きを増すこのイベントに毎年参加しているが、しっかり根付いたようだ。各蔵元がうれしそうに口をそろえたのが「リピーターの多さ」であり、知り合いで関西在住の女性酒販関係者は「1人で来て十分楽しめる」と話していたことも印象深かった。

 祭りの翌日、鹿島市役所に樋口久俊市長を訪ねると、近年の同市の活況をうれしそうに語ってくれた。鹿島酒蔵ツーリズムの成功に加え、市内の祐徳稲荷神社がタイの映画やドラマのロケに使われ同国から観光客が増えた。さらに箱根駅伝で3連覇中の青山学院大学陸上競技部が3月29日から4月3日まで初の合宿を行ったという。話を聞き、地域の可能性がますます広がっていることを強く感じた。

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【プロフィル】平出淑恵

 ひらいで・としえ 1962年東京生まれ。83年、日本航空入社、国際線担当客室乗務員を経て、2011年、コーポ・サチを設立、社長に就任。世界最大規模のワイン審査会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)の日本代表。日本ソムリエ協会理事、観光庁酒蔵ツーリズム推進協議会メンバー、ミス日本酒顧問などを務める。