良作掘り起こし電子コミック市場活性化 ビーグリー・吉田仁平社長
スマートフォンやタブレット端末の普及が進み、電子出版の拡大が予想され、特に電子コミック市場の伸びが著しい。出版科学研究所によると2016年は前年比27.5%増の1491億円に達し、電子コミックは電子出版の主力コンテンツとして期待が集まる。電子コミック配信サイト「まんが王国」を運営するビーグリーの吉田仁平社長は「知る人ぞ知る良作を掘り起こし、電子コミック市場を活性化させる」と意気込む。
--電子コミック配信は多くの事業者が手掛けている
「まんが王国は毎月800万人が利用し、単行本換算で累計5億冊以上がダウンロードされる国内最大級の配信サービスだ。一般的に電子コミックは取次会社を経て配信する。しかし当社は出版社や作家と直接契約しているため柔軟なサイト運用が可能で、コミックだけで5万タイトルをそろえている」
--ビジネスモデルは
「50ページ以上読める無料タイトルが2000以上ある。これが作品の続きを読みたい読者の有料会員化に貢献している。月額登録料は300円から。ポイントを購入し、利用すると消費される。利用頻度の高い顧客の満足度が高くなるよう、多様なボーナスポイントを用意している」
--利用を促進する方策は
「専門チームによって、埋もれたコミックタイトルを発掘することだ。見つけ出した良作は、バナー広告やキャンペーンを実施して、新規利用者とリピーターの獲得につなげている。『親なるもの 断崖』は30年近く前に発表され、絶版になっていたが、電子書籍化したところ70万ダウンロードの大ヒットとなり、書籍としても復刊された」
--新たなコンテンツはどう強化するのか
「当社は電子コミック事業を10年以上続けてきたことで、出版社や作家との強い信頼関係がある。この強みを生かしてオリジナル作品を配信したい。広告やサービスのノウハウを駆使して、ヒット作に育て上げる。作品が話題になれば他サイトにも提供して、当社の付加価値を高める」
--コミック配信以外の事業は
「作家、出版社との直接契約は1800件を超える。これらのコンテンツを有効活用して、商品を企画開発することで物販にも進出したい。すでに運用しているイラスト投稿サイトは、企業が広告に利用するときに手数料を受け取る仕組みだ。まだ収益化していないが、培ったノウハウを結集して新たなビジネスとして育てていく」
--業績の見通しは
「電子書籍市場拡大の追い風もあり、堅調に伸ばしている。17年12月期の売上高は前期比約10%増の91億6500万円を予想している。会員1人当たりの購入単価を増やすことによって利益率を押し上げ、同期の最終利益は同約65%増の6億7200万円を見込んでいる」
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【プロフィル】吉田仁平
よしだ・じんぺい 早大理工卒。1994年日商岩井(現双日)入社。2006年モーラネット社長。07年ビービーエムエフ(現ビーグリー)入社。執行役員、取締役などを経て、13年3月から現職。45歳。福島県出身。
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【会社概要】ビーグリー
▽本社=東京都港区北青山2-13-5 青山サンクレストビル4階
▽創立=2004年10月
▽資本金=17億656万円
▽従業員=70人(17年1月末時点)
▽売上高=83億3700万円(16年12月期)
▽事業内容=コンテンツプラットフォームの運営
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