米軍シリア攻撃 日本企業、原油上昇と円高警戒 地政学リスクを注視
トランプ米大統領は6日、猛毒サリンなど化学兵器使用が疑われるシリアのアサド大統領への対抗措置として同政権軍の空軍基地に対する軍事攻撃を命じた。米東部時間6日午後8時40分(現地時間7日午前3時40分)、地中海に展開する米海軍駆逐艦2隻が巡航ミサイル59発を発射し、シリア中部ホムス県のシャイラト空軍基地を攻撃。同基地は化学兵器による空爆で使われたとみられている。
米国はシリアで過激組織「イスラム国」(IS)掃討作戦を展開しているが、アサド政権を対象にした直接攻撃は2011年にシリア内戦が始まって以降、初めて。
米軍によるシリア攻撃を受け、中東情勢の先行きに日系企業は警戒感を強めている。供給に支障を来しかねないとして原油価格は上昇に転じ、安全資産とされる円も買われ、一時1ドル=110円台前半まで円高が進展した。原油価格上昇と円高は企業業績の圧迫要因になる。地政学リスクの高まりで株安が続けば、国内の個人消費にも影響が及ぶ恐れもあり、経済界は成り行きを注視する。
コスト圧迫要因に
シリアは日本からの渡航が禁止され、日系企業の進出もなく、直接的な影響は限定的。しかし、地政学リスクの高まりに伴う原油価格の変動などの影響は避けられない情勢にある。経団連の榊原定征会長は7日、記者団に対し「一番の懸念は原油の供給と価格への影響だ」と述べた。
7日の東証株価指数(TOPIX)では業種別株価指数で一時「空運」が下落率トップとなった。航行上の安全への懸念に加え、燃料上昇による業績悪化が嫌気されたため。日本航空の大西賢会長は7日、「観光を含め、人の行き来が縮小するのを心配している」と先行きに懸念を示した。
石油元売り最大手のJXTGエネルギーは「短期的に原油調達に影響はない」としているが、原油価格の上昇が続けば、ガソリンや化学製品の価格も上がり、物流費や原材料費の両面でコストの圧迫要因になる。ガソリン高が継続すれば、消費者が節約志向を強めて、モノが売れなくなり、企業業績を下押ししかねない。
輸出企業にとって急速な円高も気がかりだ。1ドル=1円の円高が進むと、年間営業利益に対してトヨタ自動車で400億円、日産自動車で140億円の減益要因になるからだ。日産の志賀俊之副会長は「“有事の円高”になれば、自動車など輸出産業に影響が大きくなる」との認識を示した。
地政学リスクの高まりに伴う、産油国周辺の経済の混乱にも警戒感が広がる。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、イラクやカタールなど中東15カ国への日系企業の進出数は2015年10月時点で756社に上る。トヨタの中近東地域での販売台数は約60万台と世界販売の約6%を占め、日立製作所も中東地域での売り上げが1000億円前後と連結売上高の1%程度。報復なども含め、局所的な混乱が他の地域に飛び火すれば、各社の輸出や販売戦略に影響が及ぶ懸念もある。
株安も消費に悪影響
株安が進むことによる国内の個人消費への影響も見逃せない。株安になると保有する資産が目減りするだけに、“逆資産効果”で高額品の売り上げに影響が出る恐れがある。高島屋の木本茂社長は7日の決算会見で「(経済には)心理的な部分でマイナスに働く」と述べ、消費にとって逆風になるとの認識を示した。(ワシントン 加納宏幸、今井裕治)
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