徳田銘木 「自然木」生かす 最適加工と独自のセンス

奈良発 輝く
枝を長いまま残して加工した「枝付き丸太」

 高級木材である吉野杉や吉野桧をはじめ、多彩な樹種の自然木・天然木を製造・販売する奈良県黒滝村の徳田銘木。本社に併設されている鉄骨造り3階建ての広大な倉庫には、さまざまな銘木が整然と並んでいる。

 ストックは3万本

 銘木は、いずれも形状や色、木目などの珍しさや希少性から珍重され、昔から数寄屋建築や茶室などに使われてきた。中でも、皮を剥いで木の表面を磨くなど、必要最小限の加工をしただけの用材は「自然木(しぜんぼく)」と呼ばれる。元の木の形状をできるだけ変えずに商品化されたものだが、どれも「こんな木もあるのか」と驚かされるものばかりだ。

 山の傾斜地で育ったため、グニャリと曲がった「曲がり丸太」。皮を剥ぎ、磨き上げられた丸太は乳白色で艶(つや)があり、象牙のような印象だ。

 1本なのに、赤茶色と白の木がウネウネと絡み合ったような木、キノコが生えているようなコブのある木、ゴツゴツとあちこちから太い枝が飛び出し、1人では抱えきれないほど巨大な木…。これぞ自然が創り出した芸術品と言いたくなる木々が並ぶ様は、壮観の一言に尽きる。

 原木は山から直接切り出すほか、木材市場に行って仕入れることもある。最もふさわしい方法で加工することで、銘木を生み出す。

 「原木のままの形を生かすのか、カットするのか、製材すべきなのか。スタッフが原木を見て、商品になるとこうなる、というのが見えてくる。独自のセンス、才能と経験だ」と徳田浩社長(59)は言う。

 村内と吉野郡内、京都・北山に計4カ所の倉庫があり、ストックしている銘木は3万本以上。「『ここを歩いていると、森の中を歩いているようだ』と言った人もいた。ここはストックヤードであり、木のギャラリーでもある」と徳田社長。

 国内外合わせて年間500社以上の関係者が、木を求めて徳田社長のもとを訪れるという。「『なぜ、こんなにそろえておかないといけないの』と聞かれるが、木を探してお見えになる方が、どんな木が欲しいかはさまざま。今売れるから置いてあるのではなく、いずれ木々に“ご縁がある”お客さんが来る可能性があるから、置いておかないといけない」と話す。

 倉庫の3階スペースには、艶やかな木の表面が美しい「磨き丸太」がずらりと立てて並べられている。「磨き丸太は和風家屋が少なくなったこともあり、市場規模が小さくはなっているが、主力商品だ」と徳田社長は言う。黒滝村は、床柱などに使われる磨き丸太の古くからの産地の一つ。多い時には村内だけで40軒ほどが磨き丸太づくりをしていたという。

 世界で一つの機械

 同社では2002年、世界に1台しかない機械を機械メーカーと共同開発し導入した。長さ20メートルまでの丸太の表皮を水圧で自動でむけるうえ、乾燥により木が割れてしまわないよう、鋸目(のこめ)を入れる背挽(び)きも自動でできる「長尺自動剥皮(はくひ)・背挽き機」だ。現在、磨き丸太の製造にも活用されている。

 「磨き丸太の木の皮を剥いだり、磨く技術があったりしたから、自然木の加工もできる。また、昔からの経験で、寒い時期に皮を剥くと木に艶が出るので、皮剥きは冬にするというようなノウハウを、磨き丸太業界の先人たちが伝えてくれているから、伝統を守りつつ、新しいことに挑戦できるのだと思う」と話した。(山本岳夫)

【企業概要】徳田銘木

 ▽本社=奈良県黒滝村御吉野12 (電)0747・62・2004

 ▽設立=1987年

 ▽事業内容=吉野杉や吉野桧をはじめとする自然木・天然木の製造・販売

                 ■ □ ■

 □徳田浩社長

 ■変木を使いやすく 多彩に商品化

 --「自然木」を本格的に扱い始めたのは

 「木の皮を残したままのものや、表面に天然カビを植えつけて斑点を付けた丸太など、昔から『変木(へんぼく)』というアイテムはあったが、約20年前からバリエーションを増やした。枝が長いまま皮を剥いで磨いたり、曲がっている丸太を2面だけ平行に切り落として『太鼓落とし』にしたり。よりお客さんが使いやすいようにした」

 --新しい市場を開拓した

 「意図的に木を自然のままに生かす『自然木』に、徐々にマーケットも動いてきたと感じ始めた。古い家を見ると、曲がった木が自然な感じで違和感なく使われているように、新しいマーケットを創ったというより、先人の知恵を貸していただいていると思う」

 --木の博物館と言っていいほどの種類と数がある

 「設計図があり、施主や設計者がそれに合う木を選ぶ場合もあるし、こちらに来て『これを使いたいから、一部設計変更をしようか』という場合もある。まったく白紙の状態で、『いずれ家を建てるので、木を見せてほしい』という場合もある。人と木とのさまざまな出合いがあり、縁がある。この地で生まれ育ち、先人たちから教えてもらったことを踏まえながら、時代の変化に合わせて、顧客がどんな木を望むのかを考える。木を通して、山と街をつなぐことが仕事だと思っている」

 --木の本場である奈良・吉野地域の強みは

 「吉野は、吉野杉に代表される木の産地。昔からの『吉野材は高級材』というブランドイメージはありがたいが、それだけではない。林業や木材業に長い歴史があり、木を育てて山から切り出し、材木にするプロセスがしっかりと確立されている。他地域ではそのプロセスを一から作り上げないといけないが、ここでは既存の仕組みを生かしつつ、新しい商品化のシステムを導入できるという強みがある」

【プロフィル】徳田浩

 とくだ・ひろし 奈良県黒滝村で生まれ育ち、サラリーマン生活を経て、徳田銘木に入社。規格外の間伐材や除伐材を高付加価値化した事業は2007年、経済産業省の「地域産業資源活用事業計画」の第1号の一つに選ばれた。59歳。

 ≪イチ押し!≫

 ■ユニークな形の「枝付き丸太」

 木の枝を切った後の節の出っ張りを生かした「桧(ひのき)出節丸太」や「槇(まき)出節丸太」。和食店内の柱や和風建築の門柱に使われているのを見ることがあるが、「枝付き丸太」「枝付き柱」は木の枝を長いまま残して加工したユニークな商品となっている。

 桧や高野槇(こうやまき)などの木を枝が付いた状態のままで皮を剥ぎ、磨き上げる伝統的な磨き丸太の製造技術を応用して商品化している。

 原木の大きさによってさまざまなサイズがあり、枝の長さも30センチ以上と長いものも。徳田浩社長は「従来は出っ張りが短い節を生かしたものだったが、今風にアレンジして開発した」と話す。

 家の中で自然を感じられる飾り柱や、ショップ内のオブジェ、ハンガーラックなど、ユーザーのアイデア次第でさまざまな使い方が可能だ。