緑地整備、モニタリング活動を強化

eco最前線を聞く

 □三菱地所開発推進部 村上孝憲・開発推進部専任部長

 世界有数のオフィス街である東京・大手町、丸の内、有楽町の多くのビルを所有する三菱地所。同社は、この“大丸有”エリアで再開発を進めており、環境対策にも力を入れている。大手門タワー・JXビルに設置した「3×3 Lab Future(さんさん ラボ フューチャー)」という施設では実証実験や、その情報発信にも積極的だ。周辺では他のデベロッパーなども豊かな緑を備えたビルの開発を行っており、開発推進部の村上孝憲専任部長は、こうした街区との連携を進めることが今後の課題だと指摘する。

 ◆皇居のお堀浄化で成果

 --同エリアならではの環境対策は

 「皇居に近いという地の利を生かし、皇居との連携を行っている点だ。代表事例がお堀の浄化で一定の成果を残している。また、国際都市間の東京の競争力向上を果たすため、「3×3 Lab Future」には交流活動と実証ラボ、情報発信という3つの機能を備えている。実証ラボでは冷温水を活用した次世代型空調システムの実験を行っている」

 --皇居の堀の浄化はどういった形で進めているのか

 「JXビルの地下に浄化施設を備えており、お風呂1杯分の水を約5秒という高速で浄化できる。これを活用することで年間約50万立方メートルもの堀の水を浄化する。さらにアオコなどの浮遊物質を90%以上除去する。また、堀の水位が低下してよどんでしまうのを避けるため、堀へ水を放流するための25メートルプール約6杯分という巨大な貯留槽も設置している」

 「こうした取り組みを通じ環境だけでなく社会、経済にとっても良い“三方良し”を具現化している。例えば経済的には容積率が通常の1300%から1400%へと向上したことでオフィス賃料が増え、浄化設備のランニングコストに充てることができる」

 --どういった効果が表れているのか

 「これまではアオコが増殖し魚が産卵する水草にまで光が射し込まないため、水草の成長を妨げ結果的に生物種の数が減っていた。しかし、アオコが減少したことで水草の成長を促す現象が顕在化した。ただ、今度は想定以上に水草が増えてしまったのでうまく間引く作業が必要になってきた」

 ◆市民参加型イベント実施

 --緑豊かな拠点の整備にも力を入れている

 「堀に隣接する『大手町ホトリア』の西側には、約3000平方メートルもの環境共生型広場『ホトリア広場』がある。皇居の二の丸雑木林を意識した在来種や地域種を主体に構成されており、コミュニティー活動の拠点として機能している。また、市民参加型イベントとして、どういった生物が生息しているのかを確認する『生き物モニタリング』を実施している。オフィスで働く人に呼びかけ昼休みを活用し観察会を行ったり、植栽業者にも手伝ってもらったりしている」

 --今後の課題は

 「このエリアでは、当社だけでなく他社も緑地整備に力を入れている。鳥や昆虫は1カ所にとどまらず周囲の森との連携がなければつながっていかないので、他の街区と協力しながら生物多様性が東京全域に広がっていく流れを形成することが必要だ」

 「そのためにはモニタリング活動を強化することが不可欠となり、その仕組みをエリア全体で統一することが必要だ。現在はフォーマットに記入する方式を取り入れているが、他の街区でも利用できる共通アプリを実用化、今年から導入する考えだ」(伊藤俊祐)

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【プロフィル】村上孝憲

 むらかみ・たかのり 京大院修士課程修了。1984年三菱地所入社。2010年から現職。58歳。福井県出身。