相互の弱点補い新事業立ち上げ
ベンチャー支援の現場から■大企業とのマッチングの場提供
ベンチャーは知名度が低く、採用や資金集めなどで苦労を強いられるケースが多い。一方、新規事業の創出や事業革新に力を入れる大企業はスピード感に欠けるため、ベンチャーの機動性は大きな魅力に映る。そこで相互の弱点を補完し合うため、両者の出会いの場を提供する動きが相次いでいる。
◆商談会で手応え
「ピッチ」と呼ばれる短時間のプレゼンテーションを活用しているのが、起業支援を手がけるゼロワンブースター(東京都港区)とCreww(クルー、同目黒区)だ。両社とも大手企業と提携しベンチャーを対象に、アイデアの早期実用化を促す「アクセラレーションプログラム」を実施している。
ゼロワンブースターは、森永製菓とともに実施した「森永アクセラレーター2016」で選抜された、ペットの健康管理アプリを手がけるペットボードヘルスケア(同港区)とアニメ制作のグランスカイ・スタジオ(同千代田区)の2社に出資。これを機に、プログラム終了後も長期にわたって息の長い支援を継続する考えだ。
大手金融機関の中で事業マッチングに特化した商談会を順次開いているのは、みずほ銀行。2月には東京都千代田区で、約120社のベンチャー経営者と大企業約60社の新規事業担当者を集めた商談会「イノベーションマッチングフォーラム」を開催した。今回で3回目だ。
商談会は大企業の担当者がいる机にベンチャー経営者が訪ねる方式。1回30分の商談が6回設けられた。みずほフィナンシャルグループの中西章裕常務執行役員は「共同研究など具体的な商談に進むケースも多い」という。参加した都内の医療機器開発ベンチャーの社長は「将来性のある話につながりそうな企業が何社かあった」と手応えを感じたようすだった。
◆創業初期に資金
こうしたステージに立てるベンチャーを育てようとするビジネスも活発だ。
創業初期のベンチャーを、経営コンサルティングと資金供給によって支援するのは、INDEEJapan(インディージャパン、同中央区)。事業革新を阻む要素を取り除く手法を企業に提案し、新規事業の実現可能性を評価する事業を手がけてきた。そのノウハウを生かし、「アーリー(創業初期)」のベンチャー支援に乗り出した。「淘汰(とうた)されたベンチャーのなかにはわずか数百万円の資金があれば、というケースも少なくない」(津嶋辰郎マネージングディレクター)といい、支援ビジネスの力は大きい。
ベンチャーへの資金供給や事業支援をめぐっては、これまで主にベンチャーキャピタル(VC)が中心だった。ただVCが扱うのは主に「ミドル(成長期)」から「レーター(株式公開前)」の段階のものが大半。アーリー向けのサービスは「手間がかかる割には利益が出にくい」(金融関係者)ため、一般的ではなかった。
技術革新やライフスタイルの多様化などで、多くの企業にビジネスモデルの転換が迫られているが、肥大化した組織で新事業を立ち上げるのは至難の業だ。一方、ベンチャーは小回りが利くものの、独自開発の技術、独創的なアイデアを生かした商品やサービスを実験できる場がない。両者をマッチングするサービスは、さらに広がりそうだ。
関連記事